ホワイトアウト=メラピークでの体験 – 岩崎元郎の山談義

ホワイトアウトとは、濃い霧や暴風雪で周囲が白一色に埋まり、視界が閉ざされて方向や斜度、地面・雪面の凸凹が識別出来なくなる現象。

だいぶ以前のことになるが、三月初めの北海道、暴風雪で車が雪に埋まり排気ガスが車内に充満して4人が亡くなり、ホワイトアウトによる道迷いで5人もの方が凍死されたというニュースにはびっくりした。

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ホワイトアウトによる道迷いなんて、山の中でだけのトラブルだと思っていたが、考えてみれば町中であっても不思議はない。

加齢と共に身体機能は低下するのは仕方ないこと。とはいうものの、畳のへりでもけつまずいて転びそうになるのは情けない。

体力・機能の低下の中で、バランス感覚の低下は特に著しいと聞く。

楽しく、安心・安全に登山を継続するには、バランス感覚の低下に歯止めをかける必要がある。そう考えて、六十半ば過ぎてからロッククライミングとゲレンデスキーを再開した。

今シーズンも2月中旬、信州長和町の鷹山スキー場と北海道のニセコで滑ってきた。

鷹山スキー場では天気に恵まれて、シニアスキーを大いに楽しんだのだが、ニセコは天気が良くなかった。特にゲレンデの上半は、時としてホワイトアウト状態になった。

天気が良くったって上手く操れないスキー、ゲレンデがホワイトアウト状態になると、どっちが上だか下だか分からなくなる。

雪面の凸凹も分からなければ、傾斜も分からない。

スーッと滑ってきてその先が急になっていると、滑りに勢いがついて転ぶ。雪面の凸凹が確認できないから、滑りをコントロールできない。

他のスキーヤーとぶつかる心配もあるし、ホワイトアウトのゲレンデを滑るのは非常に危険だと思った。

スキー場での、風のない濃霧によるホワイトアウトだってそれくらいだから、登山中に天気が急変して暴風雪でホワイトアウトになったら遭難間違いなし。

ポストモンスーンに、ネパールヒマラヤのメラピーク登山を試みたときのこと。

モンスーン明けの青空に迎えられて、ルクラへの飛行機もすんなり飛ぶ。毎日いい天気で日程をスムーズに消化してBCのカーレに到着。

翌日は高度馴化を目的にメラ・ラの少し上まで往復し、その翌日はアタックキャンプに上がった。

メンバー5人全員体調も良く、明日の登頂をだれも疑わなかった。

ああ、それなのに、アタックキャンプに入った頃から雪が降り始め、ぼくらの願いも虚しく一晩中降り続き、アタックは断念して下山せざるを得ない状況になった。

風はなかったが、ホワイトアウトである。こんな中を下るの、一瞬不安が胸をよぎったが、百戦錬磨のシェルパにリードされて無事BCに下山した。

あそこで暴風雪だったら低体温症にやられていたなと、思い出すたびに冷や汗をかく体験であった。「君子危うきに近寄らず」とはいうものの、登山をやめることはできないし・・・。

岩崎元郎(日本登山インストラクターズ協会会長/無名山塾主宰)

1945年東京生まれ。1963年昭和山岳会に入会し本格的な登山を始め、1970年に蒼山会を創立、1981年ネパール・ニルギリ南峰登山隊隊長、同年「無名山塾」を設立し登山者の育成を始める。1995年~1999年にかけてNHKテレビ「中高年の為の登山学」の講師を務め、日本百名山ブームの火付け役となる。多くの登山者と登山指導者を育てた登山指導の第一人者で、現在は「登山者と登山指導者の育成」と「安心安全登山の啓蒙活動」を進めている。著書多数。

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