山の天気は変わりやすい、これは常識といっていいだろう。
ホワイトアウトで道迷い。滑って転んで捻挫・骨折、登ったり下ったりだから日常生活に比し疲労は大きい、街中に比べれば道はあって無きようなものだから、不測に事態はいつ起こるか分からない。
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不測の事態が足をひっぱり、安全圏に辿り着く前に陽が暮れるということも時としてある。
どんな登山・ハイキングでも、雨具とヘッドランプを携行することは、タテマエでありホンネであると前号では書いた。
10月下旬、韓国の首都ソウル郊外の人気の山、北漢山の人気コース、十二城門周遊を歩いて来た。
ウィークデーだというのに大勢の人が登っている。ザックを背負い、トレッキングシューズを履いている人もいるが、多くの人は街着で運動靴、デーパックを肩にしている人もいるが、手ぶらで歩いている人も少なからずいる。
近場のハイキングコースだから、雨が降ってきたら楽しみは中止にしてさっさと下山すればいい、という考えなのであろう。
ツェルマットやグリンデルワルトのハイキングコースでも、手ぶらで歩いて入る人は多い。その延長線上という考えなのか、富士山でも手ぶらで登っている欧米人をけっこう見かける。
十二城門周遊やバッハアルプゼーへのコースで手ぶらの人と出会っても、行動時間は短いし、引き返すのも容易だから問題視するようなことはない。
むしろこちらの格好が重装備すぎて気恥ずかしくおもったりする。しかし、富士山で手ぶらな登山者と出会うと雨が降ってきたらどうするんだよ、と心配してしまう。
と、ここまで書いてきたことでぼくが言いたいことは、容易に想像つくと思う。
「どんな登山・ハイキングであれ、雨具とヘッドランプを携行することは常識」としてきたが、そんなことを考えているのは我が国の一部登山社会だけで、「雨具とヘッドランプの携行はT・P・O」だということじゃん、ネエ(笑)。
それと、もう一つ気がついたことは、性悪説と性善説。
雨具とヘッドランプの携行をT・P・Oとするのは、登山者一人一人が状況判断ができるという前提がある。
重いしかさばるから携行するのはゴメン、というのは状況判断ができているとは言い難い。その日の行程、天気変化、パーティ構成メンバーの体力・気力・健康状態をかんがみられるのが、状況判断できるということだ。
その上で雨具とヘッドランプを携行は不要とするのは、問題無し。
雨具とヘッドランプを携行するのは常識としてきた裏側には、状況判断ができない登山者が多いということを前提としていたのではあるまいか。性悪説だ。
現役バリバリの頃の岩崎は、性悪説だったんだと思うようになってきた。雨に降られりゃ濡れて辛いのは自分なんだから、携行するかしないか誰だって判断できるさ、と、トシのせいか性善説に替わりつつある。
めざす山が幌尻岳だったら、雨具とヘッドランプ、絶対に携行するけどね・・。
岩崎元郎(日本登山インストラクターズ協会会長/無名山塾主宰)
1945年東京生まれ。1963年昭和山岳会に入会し本格的な登山を始め、1970年に蒼山会を創立、1981年ネパール・ニルギリ南峰登山隊隊長、同年「無名山塾」を設立し登山者の育成を始める。1995年~1999年にかけてNHKテレビ「中高年の為の登山学」の講師を務め、日本百名山ブームの火付け役となる。多くの登山者と登山指導者を育てた登山指導の第一人者で、現在は「登山者と登山指導者の育成」と「安心安全登山の啓蒙活動」を進めている。著書多数。
岩崎元郎の山談義シリーズ
NHKテレビ「中高年の為の登山学」の講師を務め、日本百名山ブームの火付け役となり、多くの登山者や登山指導者を育成してきた日本の登山界のレジェンド・岩崎元郎による、山談義。タメになる山のお話やエッセイを不定期に連載するコーナーです。
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当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?