今年の7月下旬に、立山から五色が原往復を計画していますが、この時期はまだ雪渓が残っているそうですので不安に思っています。
10本歯のアイゼンを持っており、モンベルの雪山ハイクには参加したことがありますが、ザクザクの雪や新雪だったので、アイゼンがささらないということはありませんでした。登山で固く凍った雪や氷の上を歩いたことはないのですが、アイゼンがささらず滑ってしまうということはないのでしょうか?
7月下旬の立山から五色が原往復ルートを想定して、雪渓をトラバースする場合の注意事項や歩き方のポイントがあれば教えてください。
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大津 洋介
立山から五色ヶ原へ7月下旬に縦走とのこと、この時期4~5回ほどここを通ったことがありますが室堂周辺、竜王岳~五色ヶ原に数箇所雪渓の横断があります。その年の積雪量や梅雨時期の降雨量の多さによって残雪の量は変わってきますが、雪渓の横断が必ずあると思った方が良いでしょう。(写真はちょっと前ですが2008年雪の多い年の7月中旬です)
この時期の五色ヶ原は花がきれいですよ。楽しい登山を。
添付写真1
添付写真2
松本 善行
ご質問の内容を読んでいて、軽アイゼンを使いこなすには、本アイゼン(いわゆる10本爪以上のアイゼン)の使用スキルがあってこそ可能なのかなと思えました。
滑落しかけた場所がガチガチに凍っていたとしても、緯度と標高からして、富士山の蒼氷のような状態とも思えません。あくまでも憶測になりますが、先ずはアイゼンの手入れがされていなかったこと(爪の先が削れて丸まっていた)、もう一つは足が氷の面に対しフラット(水平)に置かれていなかったことにより滑ったものと考えられます。
アイゼンの歩行技術は、アイゼン不装着の時と同じように足の裏全体を地面に着ける、フラットフッティングが基本となります。先ずはそれから始まり、ピッケル(又はストック)との連携で2点支持(腕1本と両足との3本中、2本は常に地面と繋がっていましょうという考え)を心掛け、両足のアイゼン同士が接触しないような歩き方を身に付けなければなりません。
そしてこれに傾斜が加わることによって、歩き方にもバリエーションが生まれてきます。特に傾斜が50~60°以上となると、アイゼンをフラットに置くことは困難になってきますので、前爪(ツァッケ)を積極的に使用する登降に切り替えたします。
そうすると軽アイゼンには前爪はありません。少し傾斜が増したところで、足がフラットに置かれずにスリップしたと考えれば、先の本アイゼンでのフラットフッティングの技術を身に付けることで、軽アイゼンとの仕様の違いも実感できるのではと思った次第です。
夏にアイゼンの歯が刺さらない程の雪渓コンディションは考えにくいですが、先にも挙げた通り、アイゼンのメンテナンスとアイゼンの歩行技術を身に付けていれば、滑ってしまうというインシデントは起こりにくいでしょう。
急斜面のトラバースにおいての技術は、谷側の足を60~90°谷側に開き、山側の足は進行方向です。両足とも斜面に対しフラットに置くことを常に心掛けて下さい。
岩崎 元郎
アイゼンワークの基本的な足の運び方は、フラットフッティング。靴底がべったとフラットに雪面に踏み下ろすことがフラットフッティングで、フラットフッティングができていれば、アイゼンの爪は雪面に直角に食いこむので、スリップすることはありません。
しかし、フラットフッティングはチョー難度の高い技術です。爪を雪面に直角に食い込ませるには、靴底と雪面が正対するよう足首を曲げなくてはなりません。無造作に靴を踏み下ろせば、フラットフッティングされず、アイゼンの爪は雪面に対してナナメになりますから、軟雪ならごまかせますが、雪面が凍っていたりすると爪は雪面に食い込まず、スリップを招きます。足首の堅い人には難しい課題になりますが、フラットフッティングを意識して足を運ぶよう心がけて下さい。
雪面のトラバースは、山側の足は進行方向に向け、谷側の足は下側に適度に開いてバランスよく足を運ぶのが原則です。夏の雪渓にはスプーンカットといって、スプーンですくい取ったような凹みがあるので、そこに靴を踏み下ろすように足を運べばさほど不安なくトラバースができます。
10本爪アイゼンなら問題ないはずですが、4本や6本の軽アイゼンの場合、つま先とカカトの部分に爪がないので、登りで不用意につま先から着地すれば(その部分には爪がないのですから)スリップするし、下りでカカトから着地すれば同様にスリップの因となります。スリップを防ぐにはフラットフッティングしかありません。
→アイゼンでの歩行方法やストックの使い方など後編に続きます
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