雨が降っても楽しい。悪天下での行動 – 岩崎元郎の山談義

「岩崎元郎の山談義」、3回目は「悪天下での行動」を取り上げる。

2013年7月下旬、中央アルプス・宝剣岳で韓国人パーティが遭難した。悪天下での登山の強行で、マスコミには無謀登山と騒がれた。

電話取材を受けたりもしたので、「悪天下での行動」を考えてみた。2013年8月にまとめたものである。

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悪天下での行動

2013年7月下旬、中央アルプス・宝剣岳で韓国人20人パーティが遭難し、4人が亡くなられた。新聞と週刊誌から電話取材があって、「無謀登山ですよね」と同意を求められた。

悪天下での行動を無謀登山と決めつけるのは早計であって、その背景を考えることの方が重要だと思う。

韓国にも山が多く、山好きは日本以上に大勢いる。韓国の山は変化に富み登り甲斐ある山も少なくないが、スケールが小さい。

ヒマラヤやアルプスには比べるべくもないが、韓国の山好きの多くがスケール感を求めて日本の山に来る。

彼らもサラリーマンなのだろう、短い休暇で訪日するから登り方が凄まじい。槍穂の縦走を一泊二日でやってのける。

パーティが一つにまとまってゆっくり歩くなんてことはしない。メンバー一人ひとりがガンガン飛ばす。われわれ日本人登山者の目には、無謀登山と映る。

今回の遭難が無謀登山だとして、それは韓国人の問題ではなく登山者の、登り方の問題なのだ。

低体温症で8人が遭難死亡した、トムラウシ山の事故は、前述の事故と同根だと、ぼくは考える。

悪天候なのだから、登山中止にしたらいい。言うのは簡単である。しかし、せっかく北海道まで来て、あるいは、せっかく日本まで来たのだから登山は中止にしたくない、という気持ちが働いて登山を強行するパーティも少なくない。

トムラウシ山然り、宝剣岳然り、であろう。

トムラウシ山でも同日、事故パーティと同じコースを悪天候の中行動し、問題なくトムラウシ温泉に下山したパーティもある。

宝剣岳でも同じことが言えよう。彼らにとっては悪天候も折り込み済み、登山強行ではなく予定内の行動だったのだ。

であったとすれば、、それは無謀登山ではないといえるのではあるまいか。

7月25日、ガスの中、北アルプス・薬師岳に登って来た。

前々日富山駅前のビジネスホテルに泊まり、前日雨の中、折立から太郎平に上がった。ホテルを出るときから雨降りだった。

登山を中止するなんてことは頭に浮かんでこなかった。雨具をしっかり着込み、折立から登り始める。やがて土砂降りとなり、コースは川になった。

登り始めは暑いくらいで風もなく、低体温症の心配はなかった。雨の中でも登りの辛さを楽しみながら、太郎平小屋を目指した。

中央アルプスを縦走したときのこと、木曽殿山荘を出たときは雲一つ無い青空だったのに、熊沢岳を越えた辺りだったろうか、気がつくと空が灰色になっていた。

すぐ雨具着用を指示、着込むか着込まない内に強い西風が吹き、冷雨が降り始めた。

パーティを二つに分け、比較的歩ける組はサブリーダーと先行させた。

足の弱い組はぼくと行動を共にする。「極楽平まで休憩しません。こんな風雨の中で立ち止まったら低体温症を招くからね。

バテないようにゆっくり歩くから頑張ってね」「はいっ」という元気のいい声が返ってくる。

極楽平まで頑張り、一歩千畳敷側に下ると風はなく、空気は温もりを取り戻して、そこは天国みたいだった。

くろがね小屋に泊まって、冬の安達太良山を目指したときのこと。

朝、小屋の扉を開けて一歩出ると体が飛ばされそうな猛吹雪。「登山は中止して、ただちに下山します」。なんてこともあった。

駐車場まで下ってアイゼンを外す。岳温泉で湯舟に手足を伸ばせば、そこは極楽だ。

悪天候下での行動は、判断一つで「雨が降っても楽しい登山」になり、また「無謀登山」になったりする。   

岩崎元郎(日本登山インストラクターズ協会会長/無名山塾主宰)

1945年東京生まれ。1963年昭和山岳会に入会し本格的な登山を始め、1970年に蒼山会を創立、1981年ネパール・ニルギリ南峰登山隊隊長、同年「無名山塾」を設立し登山者の育成を始める。1995年~1999年にかけてNHKテレビ「中高年の為の登山学」の講師を務め、日本百名山ブームの火付け役となる。多くの登山者と登山指導者を育てた登山指導の第一人者で、現在は「登山者と登山指導者の育成」と「安心安全登山の啓蒙活動」を進めている。著書多数。

岩崎元郎の山談義シリーズ

NHKテレビ「中高年の為の登山学」の講師を務め、日本百名山ブームの火付け役となり、多くの登山者や登山指導者を育成してきた日本の登山界のレジェンド・岩崎元郎による、山談義。タメになる山のお話やエッセイを不定期に連載するコーナーです。

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