登山中にかかる代表的な病気といえば、高山病です。
高山病はその発症原理はいまだによくわかっていないことが多いと言われ、場合によっては死に至るような重篤化するケースもあり注意が必要です。
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本稿では、その症状の見極めと予防法について解説します。
高山病かどうかの見極め
目次
夏のシーズンになると富士山には行列するほど大勢が集まりますが、高山病で死亡した例は少ないのです。
頂上に何日も宿泊する山ではありませんし、障害が出ても1時間で1000m下れるので立地条件が良いのです。
標高からすれば高山病になる高さを越えていますが、この病気が重症化するのは1~2泊してからなので、調子が悪くて不快でも我慢して下山すれば治ります。
急性高山病は体内組織に水分が過剰に貯蓄されて本来の働きに障害が出ることだと考えられています。
気圧・寒冷・疲労が原因で発症するらしいのですが、原理についてはよく分かっていません。
肺水腫や脳浮腫になって重症化すると死亡することがありますし、そこまで進まなくても高所障害で判断力や運動能力が低下すると滑落や疲労凍死の恐れがあります。
しかし、日本国内での初心者登山に限定して考えた場合、頭痛がしたから下山する、咳が出たから下山する、では登山のほとんどが不可能になってしまいます。
頭痛がしてもそれは高山病とは違う原因かも知れませんし、たとえ高山病の初期であっても高所順応のプロセスに過ぎないことが多いのです。
頭痛・食欲低下・気持が悪い・嘔吐・疲労感・顔のむくみ・咳やたん・息苦しさ・夜間の不規則呼吸、があってもそれが単独でしかみられないなら下山しなければならない症状とまでは言えません。
一方、激しい頭痛・反射的にみられる嘔吐・尿量の減少・運動失調・思考力の減退・横になると呼吸が苦しい・意識障害・視力障害、のうちの1つでも出たら危険だからすぐに下山した方が良いと思います。
チェックすべき4つのポイント
1.頭痛
一般的な頭痛は筋緊張性頭痛と言って、肩凝りを伴った首の後ろの痛みが頭の半分に広がるもので、登山中の疲労やストレスが原因ですから、緊張を和らげたりマッサージをすれば良いのです。
血管痛はこめかみの血管のケイレンなのでこれにもマッサージが効きます。
偏頭痛持ちの人が光や音で痛くなったら、いつもの発作と思ってよいと思います。
朝目覚めたとき、頭が痛いという酸素欠乏の頭痛は高所で特徴的なものだから、体操したりして動き回ると治ります。しかし、動くと更に悪くなるようなら脳浮腫の疑いがあるから注意しましょう。
前記した他の症状も合わせて出ているようなら即刻下山が必要と思います。
2.呼吸器症状
高山の外気は乾燥しているので誰でも咳が出て痰がからみます。
これに疲れが加わって風邪や咽頭炎を起こすこともあります。
高所は酸素が薄いから睡眠中に呼吸が強い弱いを繰り返したり息苦しくて目覚めることがありますが、この時意識がはっきりしているなら周期性呼吸と言って心配いりません。
しかし、横になると息苦しくなり、起きると楽になるのは起坐呼吸と言って肺水腫の兆候で、ピンク色の痰や胸痛・発熱が加わったら一刻も早く下山しましょう。
3.胸痛
肋骨の骨折や胸骨の打撲は呼吸したり体を動かしたりすると痛みが増すから直ぐ分かります。
前胸部が咳をした時痛いのは気管支の炎症が原因と思います。
しかし、発熱を伴って左右どちらかの胸が痛いのは肺水腫に合併した肺炎の疑いが強く、息苦しさが続いたら早期に下山しましょう。
4.消化器症状
絞るような腹痛に下痢を伴ったら大腸炎です。
精神的ストレス・飲食からの細菌感染・硬水や油が体に合わない、等が原因だから高山病ではありません。
胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の持病がある人は登山すると疲労や寒冷ストレスで悪化することが多いのです。
出血すると胃酸と反応してタール便という黒い便が出るが高山病ではありません。
高山病の症状
(1)肺水腫
肺胞に水が溜まって酸素と二酸化炭素の交換が困難になった状態が肺水腫です。
目に見える症状には
- 咳
- 呼吸苦
- 起坐呼吸
- 発熱
- 血液の混ざった泡状の痰
があります。
酸素は脳障害の予防に役立つだけで肺水腫の治療にはならないから即座に下山しましょう。
呼吸を楽にする為には寝ているより何かに寄り掛かって座っている方が良く、肩で呼吸するより腹式呼吸のほうがよいと思います。
(2)脳浮腫脳
浮腫は脳のむくみです。
気圧が下がったらむくむのは当たり前で、全身どこでもむくむのですが、命に係わるのは肺と脳のむくみです。
脳がむくんでボリュームが大きくなり、包んでいる骨膜を引っ張るから頭痛がします。
一般的な頭痛のように頭蓋骨の外の問題では無いから鎮痛剤は効きません。
目に見える症状には
- 頭痛
- ぼやけて見える
- 判断力の低下
- 運動失調
- 意識障害
- 瞳孔不同
があります。
この場合も即座に下山しよう。
100mや200m下っても症状改善には繋がらず、むしろ運動することで悪化するのですが、それでも我慢して下らなくてはなりません。
(3)肺水腫・脳浮腫以外の高山病
飛行機や車でいきなり高所に立つと低酸素脳症となって意識障害をきたします。
また急激に高所に登ると網膜に出血する眼底出血を起こします。
しかし、下山すれば治るし、後遺症の心配はありません。
高山病にならないための6つの注意事項
- 目的の山より低い山で事前に高所順応しておきます。泊まると更に効果があります。しかし、順応効果は1~2ヶ月で無くなるので繰り返しやらなければなりません。
- 低い所からスタートして高所順応しながら除々に高度を上げていきます。
- ゆっくり動きます。酸素の使用量が増えるから慣れるまであまり動き回るのはやめましょう。
- 高所は乾燥している上に、荒い呼吸による水分放出が多いです。脱水状態にならないよう水分を多めに補給します。
- 疲労・風邪・下痢等で体調が悪い時は高所登山をしないようにしましょう。
- アルコールは体内の水分を奪い、高地では回りが速いから要注意です。
最後に
いかがでしたか。
放っておくと恐ろしい高山病は、予防のための知識が重要です。
また、万が一「高山病かな?」と思ったら、本稿にある症状を参考に見極めを行い、該当する場合は無理せず下山することを考えてください。
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