重いザックによる痺れや肩こりの対策 – 山の相談小屋

アクティビティ:一般登山, カテゴリ:登山と健康、体力
相談者:R.K (男性/20代)
高校生時代に山岳部に所属しており、現在大学生のR.Kと申します。
ザックの背負い方が良くないのか、20kg以上の荷物を持って長時間歩くことができず、山行中は血管および神経の圧迫によるひどい肩こりや痺れに悩まされております。できるだけ重量を抑えているつもりではございますが、数日かけての縦走などの場合は30kgを超えてしまいます。

みなさまのご経験やトレーニング方法などをご存じできたらぜひお伺いいたく存じます。

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JMIA認定インストラクター
松本 善行
松本です。

私も20代の頃に身に覚えのある問題の一つでした。
私よりも少し前のキスリング世代は、肩のみで背負っていましたから、昔の山ヤさんにはいろいろな意味で感心させられることが多いです。特に肩で背負う場合、重心がお尻の方に下がらないようショルダーベルトを手で前に引いたり、短く調整したりするため、より肩が締め付けられます。このため、登山特有の肩の疾患(長期間の肩の痺れ)は現在よりも多かったと見受けられます。

前置きはこのくらいにして、肩への負担を減らす策としてまず挙げられるのは、腰骨への荷重の分散です。現在筒形のアタックザックが主流であり、そのウエストベルトの作りはメーカーによって仕様は様々です。
試しに、お持ちの大型ザックに荷を積めて、腰骨にウエストベルトが引っかかる位置できつく締めてみて下さい。メーカーの取説などによっては「腰を包むように」と表現されていたりしますが、ウエストベルトをきつく締めた状態で腰骨に引っかかりザックがずり落ちない位置とはもう少し上のはずです。するとショルダーベルトのトップが肩から離れて浮くようになります。これは肩への負担がほぼ無い状態です。
ではこれで解決というわけではなく、このように腰にすべての重さがかかると、今度は下半身への血行が悪くなるため、歩行してみるとわかるのですが、腿の外側の血行障害を自覚することになり、これはこれでとても不快です。

上記は極端な例です。要は荷を支える箇所が肩と腰の2点とした場合、ウエストベルトの締め付けの強弱により重さの分散を図ることで、肩や腰への負担を調整することが可能です。分散の程度は、肩の痛み、そして腰の圧迫感や腿の外側の不快感が著しくないことです。私は結構、腰にあざが出来るほどベルトを締め付けることもありますが、これには個人差がありますので注意して下さい。

また肩への負担の要素はこれだけではなく、重心の位置も大きく関わってきます。
ザック本体の位置が下がり気味ですと、重心は下がり後へ引かれるため、ショルダーベルトをきつく締めることにより、肩が痛くなったりします。逆に上記のように腰に引っかかる位置にウエストベルトの高さを調整すると、重心が上がり過ぎることがあり、今度は上半身が振られやすくなるため、背骨が痛くなったりします。

大型のザックには背面に大抵アジャスト機構のある金属製や強化プラスチック製の支柱があるものが多いですが、これをうまく利用することになります。
ウエストベルトの位置を腰骨に引っかかる高さに調整したとき、それでも重心が高くなり過ぎないザックが一つの肩の負担を減らすための目安になると思います。
私は胴体が長いことが影響しているのかわかりませんが、上記のように身体にフィットするザックがなかなか見つけられなかったというのが、冒頭で申し上げた問題というわけです。

尚、トレーニング方法とは、肩こりを起こさず、痺れない身体づくり、という意味ではないと思いますが、山行の一週前に負荷訓練をすると当日は少し楽になるという経験はあります。月並みな筋トレは、スクワットやランジ(膝を90°より深く曲げるスクワットは効果があると感じていますが、膝への負担が大きすぎるため、おすすめ出来ません)、デッドリフト、カーフレイズ、フットフレクション(足首を上にあげる時に負荷をかける)ですね。
重さも50kgを超えてくると、もはやどのザックをもってしても各所の痛みをすべて抑える調整は難しくなります。メンタルトレーニングも課すなら頼もしい限りですが、やはり自分に合ったザックに巡り合うことがベターだと思います。

解決相談者:R.Kさん
ご返信が遅れまして誠に申し訳ございません。
大変ご丁寧にご回答くださり感謝いたします。
どうぞよろしくお願いします。

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