全般的なこと

雪渓をトラバースする際の歩き方や注意点 (後編)- 山の相談小屋

 
雪渓をトラバースする際の歩き方や注意点 (前編)はこちら
相談者:A.Aさん
大津さま
写真をお送り頂きありがとうございます。
7月下旬の立山から五色ヶ原への縦走では「雪渓の横断が必ずあると思った方が良い」とのこと。心して挑みます。
「雪渓のきわには必ず氷化した部分があります」とのことですが、氷化した部分と、そうでない部分があるので、よく見極めて氷の上を歩かないように、という意味でしょうか?
また「朝、夕は気温が低く硬い」とのことですが、この時期は早朝の移動は避けた方が良いのでしょうか?
アルプスでの縦走は移動距離が長いので朝は少し早めに発つことが多いのですが、6時くらいからの移動であれば、慎重に歩けば大丈夫なのでしょうか?
尚、今回の計画は友人と2名で予定しています。単独行ではありませんが、少人数ですので慎重に行動するよう心掛けます。

松本さま
歩き方を詳しく解説頂きありがとうございます。とても参考になりました。
雪渓の横断は経験がありませんので少し不安ですが、立山へ行くまでに、フラットフィッテングを意識した登山を数回しておこうと思います。 また、「急斜面のトラバースにおいての技術は、谷側の足を60~90°谷側に開き、山側の足は進行方向。両足とも斜面に対しフラット」こちらの歩き方についても、少し練習しておこうと思います。

軽アイゼンで滑られた方とは直接お会いしておりませんので、私も具体的な状況はわかりませんが、アイゼンの手入れを怠っておられたか、 足が氷の面に対しフラットに置かれていなかったことが原因では?という解説は参考になりました。

アイゼンの歩行技術では「ピッケル(又はストック)との連携で2点支持を心掛ける」と記載されていますが、ピッケルは持っておりません。 使ったこともないのですが、7月下旬の立山から五色ヶ原への縦走では、ピッケルは持っておくべきでしょうか?ストックを使用する際は、2本使用しておりますが、その場合は3点支持(ストック2本と片足)という考えで良いのでしょうか?それとも、片手はストックを持たず空けておく方が良いのでしょうか?

回答を何度も読ませて頂くと、いろいろ気になることがあり、つらつらと書き連ねてしまいました。
まだまだ経験が浅く未熟ですので、夏までに少しでも訓練しておこうと考えています。
いろいろとご教授いただければありがたく存じます。

JMIA認定インストラクター
大津 洋介
●雪渓のきわは氷化している場合が多いです(写真)。雪渓に入る時出る時には注意してください。特に雪渓を出る時、「もう終わりだ」と緊張感がなくなり氷化した部分に足を置いてしまうこともあります。完全に雪渓を出るまで安心しないでください。

●朝夕は気温が低いので雪が硬くなっている場合が多いので注意してくださいということです。山では何があるかわからないので早朝から行動するのは常識です。室堂を朝出れば鬼岳や獅子岳周辺の雪渓には昼前後になると思います。帰りは五色ヶ原を早朝出れば昼前に通過することになると思います。不安であればアイゼンを装着してください。松本さんの言うようにフラットフィッティングで歩いてください。雪面や衣服に歯を引っかけてバランスを崩さないよう注意してください。

●2016年7月25日の写真が出てきましたので添付します。歩きやすいように整備されています。状況は山小屋に問い合わせるとよいでしょう。

添付写真1

JMIA認定インストラクター
松本 善行
松本です。

急斜面のトラバースについて、実際谷側の足を90°に開くのは基本としてありますが、私個人は身体の構造上、少し無理があると感じていますので「60°~」という幅を持たせた表現をしています。

2点支持については、転倒・滑落しないための「アイゼンワーク」「ピッケルワーク」というのが、特に高山を登る際に求められる重要なスキルであって、その連携により確実性が増していくわけです。アイゼン(10爪以上)とピッケルの組合せによる雪上歩行トレーニングは、よく山岳会で行われている雪上訓練の主要課題になっていますので、“アイゼン”といった場合、つい“ピッケル”と反射的にイメージしてしまいます。

そこで、ピッケルとストックのそれぞれの使用目的について触れると、共通目的には「バランスを保つ」つまりは転倒を防ぐことが挙げられます。ところが、ピッケルにあってストックにないのは「滑落を防ぐ」機能です。それは強度の問題で、ストックには自重を支える強度がありません。
そんなところで、実は先の回答で「ピッケル(又はストック)」とストックをカッコ書きとすることに多少違和感がありました。ただ、バランスを保つだけでも2点支持の有効性はあると思い述べさせて頂きました。
そしてダブルストックの場合ですが、両手両足4点のうち、1点だけを動かしましょうという3点支持への移行も、その場のロケーション(例えばトラバース斜面が30°以上)により臨機応変に対応する点でよいと思います。大津さんの写真のようにトラバースの道幅が十分にあり整備されていれば2点だけでもよいと思います。

やはり季節がら常に雪渓上を歩くわけではないので「ピッケルにしましょう」というのも極力安全重視なら別ですが、短絡的な感じがします。「バランス感覚が極端にないと自覚している」という場合に限って「ピッケルの方がよいのでは?」とアドバイスしておきましょう。但しこの場合、滑落が許されないトラバース箇所では、山側にピッケルを確実に刺しながらの2点支持を心掛ける必要があります。
ストック1本、ピッケル1本を用意し、滑落が許されないトラバースではピッケル使用、という選択肢もありますね。

解決相談者:A.Aさん
とても丁寧な解説、ありがとうございました。
具体的な説明で、とてもよく理解できました。

今後とも、よろしくお願いいたします。

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