ダブルロープとシングルロープの墜落時の衝撃の違い – 山の相談小屋

アクティビティ:クライミング, カテゴリ:全般的なこと
相談者:notonlyabutalsob (男性/40代)
ダブルロープとシングルロープの墜落時の衝撃の違いについて質問です。

シングル仕様のロープRsとハーフ仕様のロープRhがあるものとします。

ロープ径:Rs>Rh
伸び率 :Rs<Rh
衝撃荷重:Rs>Rh

(A)シングル仕様のロープ(Rs)1本をシングルロープシステムで使用した場合と、
(B)シングル仕様のロープ(Rs)2本をダブルロープシステムで使用した場合と、
(C)シングル仕様のロープ(Rs)2本をツインロープシステムで使用した場合と、
(D)ハーフ仕様のロープ(Rh)2本をダブルロープシステムで使用した場合とで、

(1)リードの墜落時にリードの体にかかる衝撃
(2)リードの墜落時にビレイヤーの体にかかる衝撃
(3)リードの墜落時に最終クリップ支点にかかる衝撃

はそれぞれどのように異なるでしょうか?

(A)、(C)ではロープに大きな屈曲はないストレートなルート、
(B)、(D)では2本のロープで交互にクリップし各ロープに大きな屈曲はないものとします。

この質問の意図は、それほど高さのないマルチ練習壁のある屋内ジムでダブルロープシステムの練習をする場合、シングル仕様のロープを2本使うのと、ハーフ仕様のロープを2本使うのと、どちらが適切か判断したかったからです。

私の想像では、ロープに大きな屈曲がなく、ロープが同一であれば、ダブルロープシステムの墜落時とシングルロープシステムの墜落時で衝撃は同じになるのではないかと思いました。つまり、

(1)D<A=B<C
(2)D<A=B<C
(3)D<A=B<C

従って、この練習環境では、支点強度が十分高く、壁が低くてグラウンドフォールの危険がある点を考慮すると、ハーフ仕様のロープ2本使うよりもシングル仕様のロープ2本使った方が良いのではないかと思いました。(操作性は悪いですが)
もちろん、ハーフ仕様のロープ2本使った場合より衝撃は大きくなりますが、A=Bなら、ジムで普通のリード練習を行っている場合の墜落時の衝撃と同程度なので、問題ないと思いました。

一方、A<Bになるから、グラウンドフォールの危険よりも墜落時の体の衝撃を優先して、シングル仕様のロープ2本を使ったダブルロープシステムは行うべきではないという考えもありました。

経験的な観点や物理学的な観点からもご意見うかがえましたら幸いです。

「いいね!」すると登山に関する情報を受け取れます↓

JMIA認定インストラクター
松本 善行
松本です。興味深い内容ですね。
軽量化のアルパインクライミングでは浮上してこない、高さのないインドアクライミングならではの懸案?だと思いました。

相談者様において文中に但し書きをされている通りの条件として、(1)~(3)については、ロープ1本に対し(2本使用していたとしても、テンションがかかった場合のそれぞれ1本に対し)、墜落時の衝撃は、リードを1とした場合、最終ランナーにかかる衝撃は約1.7倍となり、合力の差引でビレイヤーには約0.7という衝撃が生じることはご存じのことと思います。勿論、カラビナ・ロープの材質と折り返しの角度で数値は容易に変化しますが(上記の数値は、μ=0.2,θ=180°によるもの)。

このプーリー現象の影響による(1)~(3)にかかる比率は変化しないものと考えてみると、(A)~(D)それぞれのロープの同一部位にかかる張力の比較でよいのかなと思えます。それは相談者様自ら(1)~(3)のどれもが「D<A=B<C」と思われていることからも覗え、私もそう思いました。

それから上記但し書きの条件にプラスαとして、

①シングル・ハーフ仕様のロープ共にダブルロープシステムにおいて、墜落時、最終ランナーにかけた方のロープの最大衝撃荷重値(どの部位においても)は、他方のロープの影響を受けない(ランナーの間隔が近すぎない等)。

②シングルロープのように扱うツインロープシステムにおいて、各ロープは理論上1/2の張力(ビレイヤーが常に2本のロープを均等に張っていると想定等)で分配され、その合力をもって純粋に1本のシングルロープとしての機能に近い効果を示すとした場合。

を加えたとします。
そうすると、特に上記①では、このご相談文の中で一番の要になると思われます「A=B」が成立すると推測しますがいかがでしょう。また、私なりに分かりやすく考えてみたのが、仮にダブルロープシステムで1ピン目をかなりランナウトしてクリップしたとした場合(当然危険行為です)、もう片方のロープはどこにもクリップされていない状態となり、単にバックロープとして引いているだけと考えれば、シングルロープシステムと同じことになるのかなと思いました。
つまり①は、「A<B」となる要素を取り除いた状態となりますでしょうか。

残念ながら、実際にダブル或はツインロープシステムを使用して、それぞれのロープ・カラビナ・スリング等の部位ごとの衝撃値の測定結果を出して比較したわけではないので確証はありません。ただそれを行ったとしても、細かい条件が比較対象の障害となり、単純比較が難しいことは容易に想像出来ます。ですが今後多くの方が検証され、徐々にでも理解を深めてゆければよいですね。
何でも確証があることに越したことは有りませんが、無い場合でも使用する側の理解度(素材や方法等)が応用力を補い、リスク軽減に繋がることは言うまでもありません。

余談になりますが、シングル・ハーフ・ツインすべての基準をクリアしたロープも増えてきました。シングルロープ仕様でもあるロープがツインロープシステムでも使用できるのは何とも不思議な感じはします。相談者様が(B)を練習として行いたいのとは別に(C)は有り得ないという気持ちの葛藤からでしょう。

以上、屏風の虎と同じで、全く回答になっていませんが、一人の意見ということで挙げさせていただきました。

インストラクターに相談する(無料)

リング型デイジーチェーンの利便性とダイナミックロープの衝撃吸収を備えたセルフビレイ用ランヤード

created by Rinker
Metolius(メトリウス)
¥6,710 (2024/12/03 06:47:19時点 Amazon調べ-詳細)

登山の総合スキルを体系的に学びたい方必見!

当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?

沢、岩、雪山などの山仲間を作りたい方

四季を問わず縦走・岩登り・沢登りを始め、読図にこだわった藪山や雪山縦走、あるいはトレイルラン・アイスクライミング・山スキーに至るまで様々な趣向をもった山の仲間と、登山の基本技術項目15単位を入会者ご自身のペースで、およそ3年以内をめどに受講いただける登山講習です。

電子書籍:初級中級・登山の教科書を進呈

安全な登山のためには、総合登山力が必要になりますが、ネットや雑誌などで知る単発的、断片的な知識だけでは安全な登山のためには十分とはいえません。本書は、JMIA登山インストラクターの水上宏一郎・著、岩崎元郎・監修による、主に登山入門から5年目くらいまでの初級者・中級者に焦点を絞り、安全に登山を行う上で必須の知識を体系的にまとめたものです。

  • そういえば登山に関する知識ってきちんと学んだことない
  • 断片的に知ってはいるけど、全体的には知らないことが多い
  • 登山で怖い思いをしたが、どうすればよいかわからない

などに該当する方は必見の一冊となります


電子書籍(PDF)をダウンロード

SNSでもご購読できます。

キーワードで記事を検索

コメント

Comments are closed.