シングル仕様のロープRsとハーフ仕様のロープRhがあるものとします。
ロープ径:Rs>Rh
伸び率 :Rs<Rh
衝撃荷重:Rs>Rh
(A)シングル仕様のロープ(Rs)1本をシングルロープシステムで使用した場合と、
(B)シングル仕様のロープ(Rs)2本をダブルロープシステムで使用した場合と、
(C)シングル仕様のロープ(Rs)2本をツインロープシステムで使用した場合と、
(D)ハーフ仕様のロープ(Rh)2本をダブルロープシステムで使用した場合とで、
(1)リードの墜落時にリードの体にかかる衝撃
(2)リードの墜落時にビレイヤーの体にかかる衝撃
(3)リードの墜落時に最終クリップ支点にかかる衝撃
はそれぞれどのように異なるでしょうか?
(A)、(C)ではロープに大きな屈曲はないストレートなルート、
(B)、(D)では2本のロープで交互にクリップし各ロープに大きな屈曲はないものとします。
この質問の意図は、それほど高さのないマルチ練習壁のある屋内ジムでダブルロープシステムの練習をする場合、シングル仕様のロープを2本使うのと、ハーフ仕様のロープを2本使うのと、どちらが適切か判断したかったからです。
私の想像では、ロープに大きな屈曲がなく、ロープが同一であれば、ダブルロープシステムの墜落時とシングルロープシステムの墜落時で衝撃は同じになるのではないかと思いました。つまり、
(1)D<A=B<C
(2)D<A=B<C
(3)D<A=B<C
従って、この練習環境では、支点強度が十分高く、壁が低くてグラウンドフォールの危険がある点を考慮すると、ハーフ仕様のロープ2本使うよりもシングル仕様のロープ2本使った方が良いのではないかと思いました。(操作性は悪いですが)
もちろん、ハーフ仕様のロープ2本使った場合より衝撃は大きくなりますが、A=Bなら、ジムで普通のリード練習を行っている場合の墜落時の衝撃と同程度なので、問題ないと思いました。
一方、A<Bになるから、グラウンドフォールの危険よりも墜落時の体の衝撃を優先して、シングル仕様のロープ2本を使ったダブルロープシステムは行うべきではないという考えもありました。
経験的な観点や物理学的な観点からもご意見うかがえましたら幸いです。
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松本 善行
軽量化のアルパインクライミングでは浮上してこない、高さのないインドアクライミングならではの懸案?だと思いました。
相談者様において文中に但し書きをされている通りの条件として、(1)~(3)については、ロープ1本に対し(2本使用していたとしても、テンションがかかった場合のそれぞれ1本に対し)、墜落時の衝撃は、リードを1とした場合、最終ランナーにかかる衝撃は約1.7倍となり、合力の差引でビレイヤーには約0.7という衝撃が生じることはご存じのことと思います。勿論、カラビナ・ロープの材質と折り返しの角度で数値は容易に変化しますが(上記の数値は、μ=0.2,θ=180°によるもの)。
このプーリー現象の影響による(1)~(3)にかかる比率は変化しないものと考えてみると、(A)~(D)それぞれのロープの同一部位にかかる張力の比較でよいのかなと思えます。それは相談者様自ら(1)~(3)のどれもが「D<A=B<C」と思われていることからも覗え、私もそう思いました。
それから上記但し書きの条件にプラスαとして、
①シングル・ハーフ仕様のロープ共にダブルロープシステムにおいて、墜落時、最終ランナーにかけた方のロープの最大衝撃荷重値(どの部位においても)は、他方のロープの影響を受けない(ランナーの間隔が近すぎない等)。
②シングルロープのように扱うツインロープシステムにおいて、各ロープは理論上1/2の張力(ビレイヤーが常に2本のロープを均等に張っていると想定等)で分配され、その合力をもって純粋に1本のシングルロープとしての機能に近い効果を示すとした場合。
を加えたとします。
そうすると、特に上記①では、このご相談文の中で一番の要になると思われます「A=B」が成立すると推測しますがいかがでしょう。また、私なりに分かりやすく考えてみたのが、仮にダブルロープシステムで1ピン目をかなりランナウトしてクリップしたとした場合(当然危険行為です)、もう片方のロープはどこにもクリップされていない状態となり、単にバックロープとして引いているだけと考えれば、シングルロープシステムと同じことになるのかなと思いました。
つまり①は、「A<B」となる要素を取り除いた状態となりますでしょうか。
残念ながら、実際にダブル或はツインロープシステムを使用して、それぞれのロープ・カラビナ・スリング等の部位ごとの衝撃値の測定結果を出して比較したわけではないので確証はありません。ただそれを行ったとしても、細かい条件が比較対象の障害となり、単純比較が難しいことは容易に想像出来ます。ですが今後多くの方が検証され、徐々にでも理解を深めてゆければよいですね。
何でも確証があることに越したことは有りませんが、無い場合でも使用する側の理解度(素材や方法等)が応用力を補い、リスク軽減に繋がることは言うまでもありません。
余談になりますが、シングル・ハーフ・ツインすべての基準をクリアしたロープも増えてきました。シングルロープ仕様でもあるロープがツインロープシステムでも使用できるのは何とも不思議な感じはします。相談者様が(B)を練習として行いたいのとは別に(C)は有り得ないという気持ちの葛藤からでしょう。
以上、屏風の虎と同じで、全く回答になっていませんが、一人の意見ということで挙げさせていただきました。
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