季節は春でも天気が崩れると冬山同然という話はききますが、春の山で注意すべき点としてどのようなことがあるでしょうか。また逆に春の雪山の魅力なんかもあれば教えてください。漠然とした質問で恐縮ですが、アドバイスいただけますと幸いです。
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松本 善行
分かり易いよう、冬山・春山で、大雑把に枠をくくった場合に、
●冬山:日本海に近いほど継続的な悪天候,気温が極端に低い,深雪(潜る)等
●春山:好天率が高く、時折悪天候,気温が高め,ざらめ雪(潜りにくい)等
また、それぞれのリスクの代表的なもの(厳密にはどのリスクも双方に含まれます)として、
●冬山:低体温症,表層雪崩,強風による滑落・転倒,雪庇の崩壊,視界不良による道迷い等
●春山:低体温症,全層雪崩,ブロック雪崩,雪庇の崩壊,シュルンドへの転落等
これだけではありませんが、これらの要素だけでも、冬山・春山を比較してみて何が言えるでしょうか。
一つは質問者様がご指摘された通り、春山でも気象遭難は事例としてよく挙げられます。
事前の天気の動向をよく観察し当日に備えたり、行動中の観天望気に気を配ることは言うまでもありません。
また、悪天候時には付きものである「風」は、四季を問わず、山岳エリアでは最大の脅威と言え、決して雨や雪そのものではないと感じています。なぜなら低体温症に直結するからです。特に温度の低い空気は、科学的にもパワーがあるとされ、容易に人を突き倒して滑落・転倒の要因となり、短時間で低体温に陥りやすいものです。
では悪天候以外に注意すべき点としては、他に何があるでしょう。
上の要素を見れば明らかですが、主に気温と積雪の関係において発生しうる自然現象です。
雪崩の細かい知識については、ここでは割愛しますので、別途勉強されることをおすすめします。
春山の融雪期では、堆積した雪の崩壊が進みます。この時期の雪質は結合が密となって、半ばコンクリートのように固く、これが上部から落ちてくることで、登山者への脅威となります。全層雪崩や岩壁のテラスでの雪のブロックの崩壊がそれに相当します。また、沢沿いのルートでは、雪渓と山の側面(地盤)との温度差から接点の雪が融け、隙間が大きく口を開けるベルグシュルンドへの転落のリスクが高くなります。
リスクを先に挙げると、雪山へのモチベーションが下がるのではないかと心配しますが、その魅力について少し触れます。
冬山の高山では悪天候による降雪が頻繁にあるため、深雪により猛ラッセルとなり、撤退する可能性はかなり高いと言えます。この時期に登るモチベーションとしては、厳しい時期に登ったぞという達成感にあるでしょう。
それに対し、春山へのモチベーションとは、雪山そのものを楽しむことにあると言えるのではないでしょうか?
無積雪期には登山道もなく猛烈な藪山も、雪が覆い、春先に締まることによって、障害物がなく潜らない快適な縦走が楽しめたりすることはよくあることです。
また雪山では、水は現地で雪を融かして作りますが、その水も夜間に凍ることはありません。この時期は日も長く、テント縦走なら張る場所の選定も傾斜に関わらず雪を平に均し、気温も極端に低くはありませんので、早めにテントを張って、外にこしらえた雪のテーブルで一杯やりながら?落陽を眺めたりした際は、きっと春山の虜になることでしょう。
各リスクを避けられるルートや場所の見極めを前提とし、是非、春山を楽しんでいただけばと思います。
添付写真1
添付写真2
添付写真3
ご提示いただいた内容をしっかり反芻したいと思います。
おかげさまで、さらにモチベーションがあがりました。楽しみです。
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