相談者:K.I (女性/40代)
私は高度障害にかかりやすく、北アルプスの山ではいつも苦しんでいます。移動中はペースと呼吸に気をつけながら何とかしのぎますが、小屋泊して朝起きた時がとても辛いです。何とか抜本的に克服する方法はないでしょうか?
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JMIA認定インストラクター
大津 洋介
大津 洋介
こんにちは。こぐま自然クラブの大津と申します。
高度障害に関するご相談、私は医者でもありませんので、今までの経験と文献の知識からお話しさせていただきますのであしからず。
高度障害に関するご相談、私は医者でもありませんので、今までの経験と文献の知識からお話しさせていただきますのであしからず。
一般的に標高2500mぐらいから高山病の症状が出ると言われています。過去多くの方と登山してきた私の経験でも高度障害的な症状(吐き気や頭痛など)が出るのが標高2000m以上です。ご相談者の方はどれくらいの標高から症状が出るのかわかりませんが、たぶんそれくらいの高度で症状が出ているものと思われます。
富士山の5合目や室堂に車など交通機関で一気に登ると速効的に症状が出るのを何回か見てきました。これも一般的にはよく知られたことで急激な高度上昇は高山病の症状を発症します。
私のクラブでは富士山を登る場合下から歩き始め3日間かけて登山します。1日目は馬返しから5合目まで約3~4時間かけて歩きます。5合目で1泊、2日目に山頂を往復します。参加される方の体力にもよりますが山頂まで7時間ぐらいかけて登り、5合目まで計10~11時間ぐらいで下ります。そして3日目に馬返しまで下山し登山行程を終了します。今までこのような登り方をした場合ほぼ全員高度障害はおこしませんでした。ゆっくり登ることと、5合目に宿泊することにより高度に体を慣らしたため(高度順応)と障害が出にくかったものと思っています。ただし、1名は8合目でギブアップしました。この方はほとんどの場合2,000m以上であると高山病の症状が出るので潜在的に高度に弱く、さらに体力も弱いことから疲れから症状が出やすいものと思っています。
このようなことから高山病の症状を出にくくするには、余裕をもった計画を立てることでしょう。例えば立山や剱岳周辺を歩く計画であれば室堂まで登ってそこで1泊して高度を体に慣らしてから各山に登るようにするのが良いと思われます。また、一気に3,000m級の山に行くのではなく前もって2,000~2,500m程度の山を歩くのも良いのではないでしょうか。体力トレーニングにもなります。さらに次のような呼吸法を取り入れてください。
息を吐く時にローソクを消すように「ふっ」と吐き肺の圧力を高めます。吸うのは意識しなくて結構です。私自身5,000mの空気濃度の低酸素質でパルスオキシメータで血中酸素濃度を計測した結果、この呼吸法を行うとあっという間に血中酸素濃度が90%以上になり効果を認めることができました。
今までお話ししたことは経験的なことで申し訳ありませんがぜひ試してみてください。これ以外に基礎的な体力を付けることも重要だと思います。日頃トレーニングして安心・安全登山をお楽しみください。
解決相談者:K.Iさん
ご丁寧な返信をいただき、ありがとうございました。大変参考になりました。富士山は無理なものと諦めておりましたが、ご説明いただいたような形であれば登れそうです!今後ともよろしくお願いします。
登山の総合スキルを体系的に学びたい方必見!
当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?