緊急時でも慌てない、夜間の歩行と緊急野営(ビバーク)の方法 [前編] – 登山の教科書

登山をしていて、予定よりも時間がかかってしまい暗くなってしまった体験はあるでしょうか。
経験がある方はわかると思いますが、とても心細い気持ちになりますよね。

登山中は、ケガや道迷いなど様々なトラブルに見舞われることは少なくありませんので、このような状況に陥る可能性は誰にでもあるものです。

日が暮れかかったとき、登山口や山小屋などの目的地まですぐ近くであればそのまま続行すればよいでしょう。
しかし、そうではない場合あなたはどのような判断をするでしょうか。

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選択肢は2つで、夜間でもあるき続けるか、野営(ビバーク)をするかになります。

本稿では、みなさんが万が一そのような状況に陥った場合でも安全に登山を続けられるために、夜間歩行とビバークそれぞれにおいて知っておくべきポイントと、どちらを選択すべきかの判断基準について解説したいと思います。

大切なのは経験と心の余裕

何が起こるか分からないのが山登りだから登山するには覚悟が必要です。
登山は何か起こった時上手に対応するゲームのようなもので、だから面白いとも言えるのです。

通常なら夜間の行動は控えた方が良いと思います。
足場が見えづらいし、神経を使って疲れやすい上に遠目が利かないから迷いやすいのです。

しかし、暗くても歩かなければならないことがあります。怪我・ばて・道迷い・読み違い等で予定より遅れた場合です。

“秋の日はツルベ落とし”と言い、午後になるといくらも歩かないうちに陽が陰ってきます。
秋はただでさえ気持が縮こまっているから暗くなりそうだと焦りが生じ、その結果何かとトラブルが起きるのです。

こんな時でも夜間行動の経験があると心に余裕があって開き直ることが出来ます。
しかし、経験が無いとどうなるでしょうか。

陽が沈みかけたのにまだ山中にいると明るいうちに里に出ようと焦り、道に迷ったり怪我したりしやすいのです。
また、リーダーが焦ってスピードを上げると弱いメンバーがバテます。
それらの事があって遅くなると更に焦ってパニックになります。

悪循環が続いて本当に暗くなってしまうと、精神的にパンクしてこのパーティーは危険な状態に陥ります。
気持が暗いと心に余裕が無くなって更なる事故を呼ぶので、何かあった時のリーダーはパーティーを明るくさせなければなりません。

そのリーダーがパニックになるのはもっての外で、それを防ぐ方法は経験しておくことしかありません。
リーダー・メンバーを問わず、夜間歩行と緊急ビバークの経験は登山する人にとって絶対必要条件と言えるとおもいます。

また、登山にツェルトを持っていく人は多いが、他人に言われたから持っていくというだけでは意味がありません。いざという時利用出来るようにしておきましょう。

夜間歩行(カモシカ山行)で気をつけるべきポイント

カモシカ山行とは夜間に長時間ヘッドランプをつけて山歩きすることで、耐久レース等の特殊な場合を除くと、次の2つのケースが考えられます。

(1)伝令の為に2人くらいで早く歩く

これは実力のある人に限り、速く歩くと言いながらも安全は絶対条件です。
ゆっくり歩きを卒業したらスピード歩きに進む話は『山登りの幅が広がる「スピード登山」のススメと4つのポイント』を読んで頂ければと思います。

そこでも記載しましたが、今まで転ばないように気をつけてきた人は発想の転換をして欲しいと思います。
積極的に転ぶのが一番安全で、捻挫・骨折は転びを堪えた時に起こりやすいのです。練習して上手に転ぶ技術を磨きましょう。

(2)パーティー全員でゆっくり、安全に歩く

思い掛けず夜になってしまうと安全地帯に早く逃げ出したいという意識が生まれ、パーティーの実力を越える速足になって弱い人がバテます。

リーダーはカモシカ山行の経験を積んで、メンバーの気持ちを抑えるくらいの余裕が必要です。
また、夜間歩行では最後尾の人の役割が重要で、常に人数を把握していなければならず、本人も安易に列を離れてはなりません。

その他、気を付ける点を次に挙げたいと思います。

  1. 夜道慣れしていない初心者はベテランの間に挟んで精神面のサポートをします。
  2. ライトは光量や光質が異なるから、後ろの人の灯りは邪魔になります。自分のライト光が前の人の足元にいかないように間隔を開けて歩きます。
  3. お互いに声を掛け合って迷子が出ないようにします。
  4. 電池を節約して長時間もたせるようにします。登りの時はボンヤリ明るければ事足りるから、“弱”でも良いです。道の状況によっては月明りでも歩けるし、ヘッドランプを付けない方が全体を見渡せます。
  5.  自分の電池が何時間もつかは事前に試しておきましょう。カタログ頼りにしないこと。

カモシカ山行の課題は精神面をどうコントロールするかにあります。

同じカモシカでも予定に組込んだ夜明け前のカモシカは気楽です。
山小屋を朝の暗いうちに出発することは多いが、やがて明るくなり、コース違いでも被害が少ないから心配しません。

ところが、日没後のカモシカはプレッシャーが掛かる。これから益々夜が深まり、気温が下がっていくからです。

まとめ

夜間歩行でのポイントを以下にまとめます。

  • リーダーは心に余裕をもつために経験をつもう
  • 最後尾は常に人数を把握しよう
  • 初心者はベテランではさむようにしよう
  • 声を掛け合おう
  • ベッドランプの電池の持ちは事前に把握し、節約しよう

以上、前編では主に夜間歩行について解説させていただきました。後編では、ビバークの方法と必要な装備、ビバークを判断するポイントについて解説したいと思います。

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