シングルロープとダブルロープの使い分け – 山の相談小屋

アクティビティ:クライミング, カテゴリ:ウェアと装備
相談者:ax39e3 (男性/50代)
シングルロープとダブルロープの使い分けの考え方、双方のメリット/デメリットを教えて下さい。

私の個人的な考えとしては、直線的なルートが多いスポートクライミングではシングル、屈曲ルートの多いアルパインクライミングではダブルの使用くらいに漠然と思っています。
私はアルパインが好きですが、ロープ捌きの面からはアルパインでもシングルが使いやすと感じています。でもその際は、前述した様に屈曲ルートでは、ロープの出が悪くなる事も事実で、どちらを使うか迷います。
また、冬のアルパインでは、ドカ落ちする事が少ない前提でダブルロープをシングルで使っている方も見かけますが、状況次第では許容される使用方法でしょうか?

以上、宜しくお願いします。

「いいね!」すると登山に関する情報を受け取れます↓

JMIA認定インストラクター
後藤 真一
後藤@マウントファームです。

おっしゃるとおり弱点を突くアルパインクライミングでは屈曲が多いため、ロープの流れが極力ストレートに伸ばせるよう2本を使うことが多いです。
これはロープの流れがスムーズに行くだけでなく、ラペリング(懸垂下降)する際も有利です。
ロープの流れをなるべくストレートにすることは、登りやすくするためだけではなく、実は万が一テンションした際に墜落を止めたアンカーに架かる荷重を小さくすることにあります。
トラディッショナルなアルパインルートの残置アンカーも、自身で設置したカムやハーケンなどリムーバブルプロテクション(回収可能なアンカー)にしても、一般的なフリークライミングルートで使われているケミカルアンカーやグージョンボルトに比べ、その耐荷重は小さいため、落下係数の大きな墜落はできません。
落下係数(墜落係数)は簡略的に求めれば、墜落距離 ÷ 衝撃を吸収してくれるロープの長さ です。
従ってジグザグしたルート取りでは、衝撃を吸収してくれるロープの範囲が上部だけに限られてしまい、分母が小さくなって落下係数は大きくなってしまいます。
落下係数が大きくなればなるほどアンカーに架かる衝撃荷重が増大し、耐荷重の小さなものは抜けたり破断したりする可能性が大きくなってしまうわけです。
なので分母を大きくするため、なるべくロープはストレートにした方がよくなります。
またダブルロープ規格はシングルロープよりも、衝撃を吸収してくれるロープの伸び率が高いことも挙げられますね。逆にグランドフォールする可能性のある低い場所ではの伸び率が高いので注意が必要ですが。

冬のアルパインはルートによると思います。
もちろん規格上ダブルロープをシングル使用してよいとは言えません。
ひとえに軽量化という課題と安全性という課題をどう天秤に架け判断するかなのでしょう。
最近は細身のシングルロープも出ていますので軽量化課題を少しずつ解決していますね。

添付写真1

解決相談者:ax39e3さん
後藤さん、迅速で明快なご回答ありががとうございます。

神奈川労山のリーダー学校では大変お世話になりました。
今後ともご指導宜しくお願いします。

インストラクターに相談する(無料)

 

登山の総合スキルを体系的に学びたい方必見!

当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?

沢、岩、雪山などの山仲間を作りたい方

四季を問わず縦走・岩登り・沢登りを始め、読図にこだわった藪山や雪山縦走、あるいはトレイルラン・アイスクライミング・山スキーに至るまで様々な趣向をもった山の仲間と、登山の基本技術項目15単位を入会者ご自身のペースで、およそ3年以内をめどに受講いただける登山講習です。

電子書籍:初級中級・登山の教科書を進呈

安全な登山のためには、総合登山力が必要になりますが、ネットや雑誌などで知る単発的、断片的な知識だけでは安全な登山のためには十分とはいえません。本書は、JMIA登山インストラクターの水上宏一郎・著、岩崎元郎・監修による、主に登山入門から5年目くらいまでの初級者・中級者に焦点を絞り、安全に登山を行う上で必須の知識を体系的にまとめたものです。

  • そういえば登山に関する知識ってきちんと学んだことない
  • 断片的に知ってはいるけど、全体的には知らないことが多い
  • 登山で怖い思いをしたが、どうすればよいかわからない

などに該当する方は必見の一冊となります


電子書籍(PDF)をダウンロード

SNSでもご購読できます。

キーワードで記事を検索

コメント

Comments are closed.