山で強い体をつくるためには – 山の相談小屋

アクティビティ:一般登山, カテゴリ:登山と健康、体力
相談者:T N (女性/10代)
私は高校で登山部に入っています。最適なトレーニングの仕方について教えてください。自分は結構体力はあるのですが、部員の中に、歩き方はフラフラで、低身長なので歩幅が他部員に比べ小さく、山では列からすぐ離れてしまう子がいます。その子を中心に鍛えてあげたいです。
今は、私は20キロ、その子は14キロで低山の歩荷(上り下りを含め40分程)をしています。

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JMIA認定インストラクター
栗山 祐哉
Kuri Adventures 代表の栗山です。

もしかすると根本的にパーティーとしてペースが早すぎる可能性があります。

 運動習慣がある方は高い心拍数を維持したままでも行動できますが、エネルギー代謝の観点から考えると正しい判断とは言い難いものがあります。
 
どんな人でも、高い心拍数では糖を中心にエネルギー生産をし、低い心拍数では脂質を中心にエネルギー生産をします。人間の体に蓄えられる糖は2,000kcal程度ですが、仮に体重60kg/体脂肪率15%だった時、その人の体の中には63,000kcalものエネルギーが蓄えられています。心拍数120~140前後の運動強度だった場合、消費エネルギーの半分くらいを糖質、もう半分くらいを脂質から生産できます。
 
もし体重60kgの方が20kg背負って登山を行ったとすると、1時間あたりに凡そ700kcalのカロリーを消費することになり、7時間の登山では5000kcal前後ものカロリーを消費することとなります。このエネルギー量を食事で賄うのは現実的ではありません。
 
もし運動強度を下げた状態、すなわち喋りながら歩いても一切息が乱れないくらいのペース(恐らく10代ではとても遅く感じると思います)で歩けば、2500kcalは体内に蓄積されている脂質から生産される事となり、消費される糖は2500k化lで済みます。
 
例えば朝食にパンを食べ、昼食にカップラーメンを食べ、夕食にお腹いっぱい米を食べたとします。さらに行動食として柿の種などをポリポリと食べながら歩いたとしましょう。これで2500kcalの糖質を大凡摂取できます。
 
運動習慣があり、高い心拍数で活動できる方も、この原則からは逃れられません。初日は元気でも、数日経てば必ずエネルギーの枯渇を起こします。まずは自分自身がどのくらいの心拍数で歩いているか確認してみましょう。

その上で、トレーニングと対策となります。

 パワーウェイトレシオ = 最大出力に対する総重量の比率 を小さくしていく事で、これまでよりも低い心拍数を維持したまま速いスピードで行動できるようになります。
 
スクワット、カーフレイズ、階段昇降運動を繰り返して下半身を中心とした骨格筋を鍛えることで出力が上がります。
10代ではほとんど必要ないと思いますが、もしその方が膨よかな方であれば、ダイエットすることで総重量を軽くすることもできます。また装備の軽量化を考えることも重要で、余分な荷物を持っていかない努力をする事でも総重量は軽くできます。(私の夏山登山装備は、幕営一泊二日で12Lで収まっています。もちろん、安全に関わる装備を一切省かずに)
 
これに加え、心肺機能の強化も重要です。脂質代謝能力を高めるためにLSDトレーニング(歩くより少し早いくらいのペースでのまったく辛くないランニングを1時間以上)、インターバルトレーニング(限界まで心拍数を上げ、その後一旦落ち着かせ、再度最大心拍数に上げるのを繰り返す運動)を週に1回ずつ、有酸素運動(心拍数165以上を維持したランニング)を週に2回程度、部位別の筋トレを週に2~3回などを繰り返せば、疲れにくい体作りができます。
 
しかし冒頭に説明したように、それは疲れにくいだけであり、高い心拍数で行動すればそうでない人より先に動けなくなります。そしてそれは山では致命的な状況に陥る原因となります。

まずは日常において体を鍛えましょう。
その上で本番の登山では、可能な限り優しいペースで上がりましょう。
ちょっと難しいお話になりましたが、参考にして頂ければ幸いです(*^^*)

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