登山インストラクターが教える、快適なテント泊のためのイロハ(2) – 登山の教科書

2回にわたって解説するテント泊シリーズ、1回目の「登山インストラクターが教えるテント泊のイロハ(1)」に続き、今回は経験豊富な登山インストラクターが伝授する快適なテント泊に関するノウハウをお伝えします。

テント泊に必要な装備とは

一般登山用品以外で必要な物を以下にリストアップします。
 

(1)個人装備

① シュラフ

シュラフには春から秋にかけてのスリーシーズン用・冬期用・夏期用があります。
高山は寒いから夏でもスリーシーズン用が良いです。
ファスナ-が付いていて前が開く物でないと不便です。

ISUKA(イスカ) エア 300SL

② シュラフカバ-

透湿防水になっていてシュラフを保護します。
たいていのシュラフは防水になっていなくて、テント内は結露で濡れるから必携です。
暑い時はシュラフカバ-だけでも良いです。
これもファスナ-付きを用意しよう。

イスカ ゴアテックスシュラフカバー

③ サ-マレストマット

昔のエア-マットは中で空気の対流が生じて寒かったが、今のサ-マレストマットは改良されていて快適です。
全身用と半身用があり、特殊な事情でない限り半身用で充分だから軽量化を計りましょう。

thermarest(サーマレスト) プロライトプラス

④ ナイフ

万一、テント内で火事が起こると驚くほど火の回りが速いです。
あわてて開けると出口のファスナ-が布を噛んで開かなくなります。その時は止むを得ないからナイフでテントを切り裂いて逃げます。
テント内では常にナイフを携行し、出し易いポケット等に入れておきましょう。

OPINEL オピネルステンレス

⑤ トイレットペーパー

山では水が貴重なので食器や鍋を洗う代わりにトイレットペ-パ-で拭きます。
中芯を抜いておいて中央から引き抜いて使うと便利です。
水滴がたれると中までグシャグシャになるのでビニ-ル袋に入れて保管しよう。

モンベル O.D.ロールペーパーキット アソート

⑥ その他

食器・箸・ゴミ入れ袋を用意しましょう。
 

(2)共同装備

① テント

遠征隊や合宿で使うベースキャンプ用や強風に耐える高強度のものがあり、熱帯地方用のオ-ルメッシュもありますが、そういう特殊なものでなく一般登山用のコンパクトなものを購入しましょう。
 
重要な事は軽量化と扱いやすさです。
従来のテントは本体・フライ・ポ-ルと分かれていましたが、本体をゴアテックスにしてフライ無しのものが出ています。
 
ト-タルでは軽いのだが、大勢で分割して運ぼうとするとパ-ツでは重くなります。
大きさの表示は 3 人~4 人用となっていて分かりづらいのですが、3 人なら荷物を中に入れ、4人だったら荷物はテントとフライの隙間に置く、というように理解したら良いです。
アライテント エアライズ2

アライテント エアライズ2

② テントマット

地中からの防湿と保温の役目をします。
アライテント エアライズ2アンダーシート

アライテント エアライズ2アンダーシート

③ その他

ガスボンベ・バ-ナ・コッフェル・おたま・水・食材・ライタ-・調味料や油(小分けして、中身が分かるようにして持って行く)・板(ボンベ固定用)

テント泊での食事のポイント

登山の食事に求められる要素は軽い・早い・簡単・栄養・味ですが、縦走は何日も背負って歩くので食材の軽量化が重要ポイントです。
レトルト系食品よりフリ-ズドライ系食品の方が軽くなります。
 
 
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水場があれば調理用の水は不要で、雪山では雪を溶かして水を作ります。
水の量とガスの量はしっかり計算して過不足なく持っていきましょう。
食材は包装を取り外し、インスタント食品等は山小屋の売店で調達しよう。
 
ただし、売っていない山小屋もあるから事前に調べておかなければなりません。
調理手順や所要時間は家で研究してから出発すること。出来れば家で試してみるのが良いと思います。

テントの設営場所は気をつけよう

(1)水捌けの良い所

窪地は雨が降れば流れ込んでくるから駄目です。湿地や水が流れた 形跡のある所を避けましょう 。

(2)平らな所

整地しても傾斜が直らないなら、高い方を頭にして寝るしかないのですが、夜中に少しずつ体がずり下がってきて、何回か体勢を戻さなければいけなくなります。 

(3)安全な所

落石や土砂崩れの心配があるから崖下にはテントを張りません。
沢筋の時は出来るだけ高台を選びます。
水が濁り出したらあっという間にザ-ッときて、1mや 2 mはすぐ水位が上がります。
草地まで上がっておけば安心です。 

(4)風当たりの弱い所

鞍部は風の通り道になっていて突風が吹きます。
沢も風の通り道になっています。
稜線上は常に強風に曝されるので尾根を少し下った所が良いです。 

(5)水場・トイレ・登山道、からは遠からず近からず

遠いと不便だが、あまり近過ぎ ると人の往来が激しくてうるさいです。 

(6)団体や大人数のテントの近くは避ける

宴会が始まったらうるさいです。

テントの設営と撤収における注意事項

テントの組立て方は購入時に店で教わるとして、ここでは設営時の注意事項を書きます。
 
(1) テント設営の前に整地を行います。傾斜地はなるべく平らに均らし、石を拾いましょう。マットを敷いても突起するような石があると熟睡できません。
 
(2)テントの出入り口は風が吹く方向に向けないないようにします。設営時に風が無くても沢や稜線を読
んで、風向きと直角方向に出入り口が来るようにします。沢では上流側から風が吹くことが多いです。
 
(3)テントを袋にしまう時は空気の逃げ道を考慮しながら押し込むだけで良いです。きれいに畳むのは時間が掛かるし、2 人がかりでやらなければなりません。それに、いつも同じ所に折り目が付くので痛みやすくなります。
 
(4)テントを張る際は山小屋等の管理所で受付を済ませて使用料を支払いましょう。その後、受付済を証明する札を貰ってテントの外側に下げます。
 

テント内の生活を快適に送るためのノウハウ

(1)前の晩

① 設営したら 1 人だけ入ってテントマットを敷きます。その後メンバ-全員のザックを手渡しで入れ、とりあえず四隅に置きます。それから全員が入って荷物を整理しましょう。
 
② 火の付いたガスコンロを倒したら大変だから特に注意します。そのため、テント内で立ち上がる時は隣りの人の肩を借りてふら付かないようにします。
 
③ 互い違いにするか頭を並べるか相談して寝る場所を決めましょう。外側寄りは寒いし結露でテントが濡れて条件が悪いので、体力が弱い人を内側へ入れましょう。
 
④ 狭いので寝る準備は一人ずつやります。その間、他の人は外でトイレに行ったりして時間を潰します。
 
⑤ シュラフの袋に予備の衣料等をつめ込むと枕が出来ます。エア-マットの袋等、袋類は全てここだと決めておけば、翌朝あちこち探さなくて済みます。
 
⑥ シュラフの中にスッポリ身体を入れてから、シュラフカバ-をズルズル引き上げていく方法が良いです。
 
⑦ ザックは足の下に敷きます。足を少し持ち上げて寝ると疲れがとれるし、夜間に冷えてきたらシュラフごと足を入れると暖かいです。
 
⑧ ヘッドランプと水筒を枕元に置きしょう。

(2)朝

① 起きたら先ず、全員が歩調を合わせて火を焚く場所を作ります。テント内を暖めると同時にお湯を沸かす為で、お湯さえ作っておけば何にでも使えます。
 
② シュラフやシュラフカバ-を袋に入れる作業は狭いから座ったままスピ-ディ-にやります。この場合もたたむと言う発想は捨てて、空気の逃げ道を考えながら押し込みます。
 
③ サ-マレストマットから半分空気を抜いて折りたたむと座布団になります。
 
④ 以上の事を全員がやれば真ん中にスペ-スが空くので、そこに向き合って火を焚き、お湯が沸くまでの間に座ったまま荷物を整理します。
 
⑤ 座ったまま作業する為には、手の届く所に必要な物を整理整頓して置かなければなりません。

最後に

いかがでしたか?
テント泊には、必要となる装備や設置場所に関する注意だけでなく、テント内での生活を快適にするための工夫が必要になってきます。
 
本稿ではそういったテント泊での基本的なノウハウを一通り説明しましたので、実際のテント泊を通じて経験をつんでいきましょう。

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