山岳指導者直伝!初心者が疲れない山の歩きかた 5つのコツ

疲れない歩き方

整備された街を歩くのとは異なり、山登りはデコボコした坂道を歩かなければなりません。

そのため、普段の街歩きの感覚で山を歩くと思っていた以上に疲れてバテてしまったり、また捻挫などの怪我を負ってしまう場合もあります。

本稿では、初心者が身につけたい安全でバテない山の登り方として定評があり、GoALPの監修者でもあるJMIA 理事長 岩崎元郎氏が提唱する「岩崎流ゆっくり歩き」のポイントを紹介します。

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今さら歩き方!?

荷物を背負って山道を歩くのは登山の原点です。歩く行為は幼児の頃から何十年もやっていて“今さら技術論でもない”と思うかも知れませんが、長年繰り返した街の歩き方と登山の歩き方はかなり違うので、歩行技術の習得が必要になります。

また、登山は安全でなければなりません。全てが整備され、安全が保障された街を素早く歩くのに慣れきった人が、いろんな危険が待ち構えてデコボコした坂道を登り降りしようというのですから、安全面から考えた歩行技術も必要になります。

街の歩き方と異なる山の歩き方をまとめたのが『岩崎流ゆっくり歩き』で、バテない効用と共に安全面でも有効な歩き方です。

熟年になって登山を始める人は長い歳月の間に慣れ切ってしまった街の歩き方をなかなか変えられないと思います。技術を覚えて一旦出来るようになっても気を抜くとすぐ街の歩き方に戻ってしまうので、体に馴染むまで意識して繰り返す必要があります。山に入った途端に体が条件反射し、山の歩き方が出てくるようになればしめたものですね。

一方、何の世界でも安全と能率は相反するから、片方に偏り過ぎないように適度に折り合いを付けなければならないことも意識しておきましょう。

岩崎流ゆっくり歩き

無名山塾の岩崎元郎氏がNHK教育テレビへの出演を機にまとめた理論で、初心者が安全でかつ疲れずに歩き続けられるよう、街の歩き方と違う山の歩き方を具体的に提唱しています。

ポイントは5つです。

  1. 歩幅を小さく
  2. 足音をたてない
  3. 靴裏を見せない
  4. 二本のレール
  5. パクパクはダメ、まず吐く

ポイント1  歩幅を小さく

街の歩き方は「後ろ足の踵を上げてつま先でけり出し、反動でその足を前に出す。背筋を伸ばし歩幅を大きくとる。必然的に踵から着地する。」反動を付けなければ体重移動出来ない歩き方なので、山でこれをやるとフクラハギに負担が集中して筋肉が疲労し易いのです。体力に余裕があるうちは良いのですがそのうちバテてきます。

街では歩幅60cm・分速60mくらいで歩くのが普通です。 一方、山の歩き方は「後ろ足の踵が上がってきたら、そこで脚を引き上げる。膝を押し出すようにして鉛直方向に踏み下ろす。足首の力を抜いて膝下を一体化し、足裏全体をベタッと着地させる。そこに上体を静荷重静移動する。」

前傾姿勢が基本で、体が移動していくというイメージです。正確には、背負った荷物の重さと本人の体重とからなる重い荷物が斜面に沿って移動していくと言うイメージになります。

歩幅は前傾姿勢の角度によって決まりますが、つま先で蹴り出さなくても体重移動出来る範囲だから30cmくらいになります。膝から下をぶらりとさせた状態で静かに足を下ろした時の歩幅であって、街での歩幅の半分くらいです。

歩幅を小さくすることには別の効用もあり、一歩で稼がなければならない高度差が小さくなるから、筋肉への負担が少なくて済みます。速度は街での半分、分速30mにすることが心拍数を上げない、つまり山でバテないコツになります。体を前傾させて太くて強い太腿の力で膝を前に押し出すことになり、使う筋肉はフクラハギではありません。

さて、ここまでを繰り返し練習し、少し慣れてきたら太腿の筋肉への応援として大腰筋にも手助けしてもらいましょう。腰の奥にあって足を高く上げる時に役立つ筋肉が大腰筋ですが、中高年になると長らく眠らせている人が多いようです。トレーニングして大腰筋を目覚めさせると更に疲れにくく、大きな力が手に入ります。

しかし、猫背の姿勢は背中が前へ行くと同時に腰が後ろに下がっているので大腰筋を使うことが出来ない。猫背の人は腰を前に出すように意識して矯正しよう。

ポイント2  足音をたてない

これは丁寧に歩きましょうということです。街では無意識のうちに乱暴に歩いていたかも知れませんが、山へ入ったら足場を良く見て、山の歩き方を意識しながら歩きましょう。

ポイント3  靴裏を見せない

靴底をベッタリ着地させ、靴底全体に体重を預けるようにして歩く事をフラット・フッティングと言いいます。登山用語の通じない初心者に分かるように「靴底を見せない」と表現したのです。これを無視して、登りでつま先から着地するとつま先立ちの形になってフクラハギに負担が掛かり、下りで踵から降りると尻餅をつくきます。

フラットに置けるような場所を見定めることが大切で、段差のある坂道の場合は真っすぐ足を出すより“逆ハの字”に出す方がやり易いです。

ポイント4  二本のレール

「気をつけ」の姿勢は点で立つから不安定ですが、「休め」の姿勢は面を捉えるから安定します。この安定した姿勢で登ったり下ったりしなさいと言うことです。肩幅間隔の2本のレールを想定し、右足は右レール上、左足は左レール上に足を置いて進むイメージです。

ポイント5  パクパクはダメ、まず吐く

ゆっくり歩きの目安は“呼吸を意識しないでいられる”くらいが望ましい。それでも時には心拍数が上がって呼吸が荒くなります。その場合は激しく息を吸うのでなく、ゆっくり吐き出すことです。吐いて肺が空になれば自ずと空気を吸い込みます。

最後に

いかがでしたか。山での歩き方は実際に経験を積み上げないと身につきません。本稿で紹介した「岩崎流ゆっくり歩き」の5つのポイントをしっかり頭に入れ、次の登山から実践してみましょう。

また、初心者の域を脱したい方は、ぜひスピード登山も参考にしてみてください。

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当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?

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