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後藤 真一
最近の週末も悪天の連続で本当に困ったものですね。
最近の撤退例ですが、具体性に乏しいことまずご容赦ください。
今年の撤退は奥利根、谷川方面の講習でありました。
台風の接近ということもあったのですが、一日前倒しに変更して出発。
行動中は強風ながら青空も覗き快適かに見えましたが
勢力範囲の広い台風でしたので、予想以上に北東からの湿風と山岳波(ウェーブ)により
国境稜線上は分厚い雲が波を打っていました。
そのような様子から稜線上は強風と雨に休まることなく晒されてしまうのは明白で、
テント泊予定でしたので、このまま行けば低体温症のリスクの可能性があると思い
他の方に状況説明とリスク説明のうえ協議して撤退しました。
たとえ夏山でも条件次第で簡単に低体温症になるのは過去のトムラウシ遭難事故でも明らかですし、
あの雲には過去何度も身体が震える想いをしていましたので。
また同行された方の体力不足により、今まで架かった時間と、さらにペースダウンを上乗せしたこれから架かる
時間を計算し、予定していた下山時刻に間に合わないことを逆算して
やはり同行された方に状況説明しご理解のうえ撤退してきました。
加えて、もしこのまま行動すればどのような事態が起こり得るかも、過去の経験からお話しさせていただきました。
さて撤退判断は気象に限らず、メンバーのトラブル、予定時間オーバー、装備の不備など様々あると思います。
大事なことは、何か危惧された事象があり、このまま継続すればどんなリスクが顕在化してしまうか、を
イメージし、これ以上先に進んでしまえばヤバいぞ、というデッドラインを見極めることだと思います。
一番わかりやすいのは安全に下山できる時刻ですね。
日没時間がたとえば17時なら、ちょっとしたトラブルも想定して1時間前の16時に下山を完了させる。
そこから逆算して13時までに△△に着かなかったらリターンするとか。
このような行動判断を登山計画書の中に盛り込んでおき、メンバー内でコンセンサスを得ておくようにしたいものです。
一番危ないのが「行けるところまで行こう」です。
行動判断基準が共有化されていない証拠であり、先述のデッドラインを意識されていないため、遭難の第一歩に踏み込んでしまっています。
気象遭難はそのような意識と情報共有、そしてコンセンサスの欠如も多いかもしれませんね。
添付写真1
添付写真2
岩崎 元郎
さて、悪天時の撤退以前の問題として、明日山行を予定しているのに天気予報は雨。明日の山行は実施するか中止とするか、があります。筆者の場合は、原則として集合場所まで行くことにしています。雨の予報で中止にしてしまったら、降らなかった時、行けばよかったと後悔することになる。集合場所まで行っておけば、雨が降らなければすぐ登山スタートできます。予報通り雨だったら、登山は断念して近くの温泉にでも行きます。
山行中、天気が急変した時、続行するか撤退するかはメンバーの顔色をみて判断します。みんなが元気で明るい顔していたら決行、状況にめげて暗い顔していたら撤退。
空木岳~木曽駒ヶ岳縦走に十数人のパーティでむかった時のこと。1日目は池山尾根を登って空木岳に立ち、木曾殿山荘に泊まった。夕食後に見たテレビの天気予報で、翌日は昼頃から天気が悪化することを知らされた。2日目の朝は素晴らしい青空だった。青空に気をよくして我々は木曽駒をめざした。熊沢岳を過ぎた辺りだったろうか。気がつくと青空は消え、空は暗くなっていた。ヤバっと思ったらポツっときた。「雨具をつけましょう」といってパーティを止め、ザックから雨具を出す。雨具を着用するかしないかのうち、ザーつときた。強い西風も吹き付ける。
撤退というのは、バックすることだけではない。いかに速やかに安全圏に脱出するか、ということである。ぼくは極楽平までがんばり、千畳敷に下るのがベストと判断した。「立ち止まると低体温症になりかねないので、極楽平まで休憩しません。バテないようゆっくり歩きますので、がんばってついてきてください」。
途中で立ち止まらず極楽平まできた。千畳敷にむかって東側の斜面に入る。たちまち風は収まり、温かくなった。無事、撤退成功。
様々な経験を文章化してご案内するのは至難の技です。様々な経験、タメになるおしゃべりをする会を考えます。日時・場所が決まったらお知らせしますから・・。
確かに、撤退判断は気象条件に限らないですね。このまま行ったらどうなるか・・・想像力の欠如にならないよう気をつけたいと思いました。時刻による基準と同行者のコンセンサスはとるようにしていきたいと思いました。とてもリアルでためになるお話ありがとうございました。
岩崎さん
とてもためになります。確かに、「撤退」というよりいかに速やかに安全圏を脱出するか、ということが本質ですね。勉強になります。現場で迅速にそういった判断ができるようになりたいものです。ぜひ、続きについてお話を伺える機会がありましたらよろしくお願いします。
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当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?
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