日本ならではの登山形態、夏山縦走の魅力 – 登山の教科書

山登りをする人であれば、いくつもの山々を渡り歩ける夏山の縦走は憧れの対象ではないでしょうか。
最初はハイキングから始まった人でも山行を重ねるうちに縦走登山に興味をもち、だんだんと自分なりの山登りのテーマやこだわりを持つようになるものです。

一方で、夏山を縦走するには、体力の問題・休暇日数の問題・同行メンバーの実力の違いなどが問題になってきますよね。

そこで本稿では、3回にわたって夏山縦走がもつロマンとともに、実際的なプランニング法や縦走におけるノウハウを解説したいと思います。

まずは、筆者が考える縦走のもつロマンについてお伝えします。

縦走登山とは

ハイキングの延長で山登りを始める人は、初めのうちピークハントと言って1つ1つの“お山”に登ります。
頂上に立つことだけが目的だから一番易しいルートを登って同じ道を帰ります。
しばらくそういう登山を続けていると行きたい山が増えてきて、1つ1つやっていては捗らないことに気付きます。

そして頂上に立った時、隣の山がすぐ傍にあって高さが同じなら、ついでに登って帰れば効率的だと思うようになります。それに登った先にまた隣があったらどうするか。更に隣があったらときりが無いのですが、これを縦走登山と言います。

縦走登山は体力と休暇の日数が問題になりますが、それとて不可能と諦めてはいけません。
“やれるかな?”ではなく、やりたいならやれるようにしようと言う意識改革が大切です。
はっきりした目的に向かって頑張ろうという人が集まるとパーティーが出来ます。

体力が無いなら体力を付けましょう。
体力が無いのを年齢の理由にして諦める人は多いのですが、それは自分に対する甘えであって、年齢は辛い努力から逃げる口実に過ぎません。
現在普通に登山している年齢なら、加齢による体力低下よりトレーニングによる体力向上の方が上回るはずです。

縦走登山は“日本ならでは”の登山形態と言われています。
ヨーロッパアルプスは厳しすぎて駄目で、ヒマラヤはもっと厳しいです。
幾つか縦走が試みられたがそれは例外で、厳しいから必然的にピークハントになってしまいます。
それに対して日本では思い切って縦走が楽しめます。
考えようによってはマッターホルンに立つより充実した気分が味わえるかも知れないのです。

縦走登山は本来知的な遊びで、面白さは計画段階の夢の広がりにあります。
それ故に、プランニングという知的な部分を自ら捨て、他人が定めたルートに乗って、ひたすら肉体労働をしていたのでは勿体ないのです。
縦走登山のプランニングはのめり込んでいくと限りなくロマンが広がり、“こだわり”が段々大きくなっていきます。

縦走ルートは登山者の”こだわり”

初心者から脱皮して縦走登山者にまで成長すると、登山が分かってきて追い求めるテーマを持つようになります。
これは間もなく“こだわり”に発展し、その“こだわり”も次の(第一段階)から(第三段階)まで次第にエスカレートしていきます。

(第一段階)有名な縦走コースを歩きたい。 – 点から線への脱皮 –

ピークハントから目覚めて稜線歩きに参入すると、初めはガイドブックや他人の話から知識を得ます。
登山に富士山や剣岳等のメジャーな山があるように、縦走コースにもメジャーなルートがあります。
北海道から九州まで、全国各地に有名な縦走コースがあって書き切れないので、日本アルプスの憧れの稜線に絞って幾つか挙げたいと思います。

①北アルプス表銀座(燕岳~槍ヶ岳)
正しくは槍ヶ岳表銀座コースと言って槍ヶ岳への登山ルートの1つです。
燕岳から歩くと、高瀬川を挟んだ向かい側の裏銀座の山々が回り灯籠のように入れ替わりついて来て、近づくにつれて槍ヶ岳がどんどん大きくなります。
晴天が少ないのが難点だが、天気に恵まれるまで何回でも挑戦する価値があります。

②北アルプス裏銀座(烏帽子岳~槍ヶ岳)
正しくは槍ヶ岳裏銀座コースと言って槍ヶ岳への登山ルートの1つです。
表銀座の場合と同様向かい側の表銀座の山々がついて来て、違った形の槍ヶ岳がどんどん大きくなります。

③槍・穂の縦走(槍ヶ岳~穂高岳)
穂高岳だけでも北穂・奥穂・西穂・前穂とあります。
ルートはいろいろ考えられますが、どこへ行っても荒々しい岩の稜線で、大キレットとかジャンダルムなどの難所が待ち構えています。

④白馬三山(白馬岳~白馬鑓ヶ岳)

⑤南アルプス南部(悪沢岳~光岳)

⑥白峰三山(北岳~農鳥岳)

⑦鳳凰三山(地蔵岳~薬師岳)

⑧中央アルプス主稜(茶臼岳~越百山)

(第二段階)地図上に色塗りしてつなぎたい。- 線の延長 –

しばらくメジャーなルートを辿ると、自分の歩いた所を地図上で色塗りしてみたくなり、やってみると線と線が途切れているのが気になってきます。
何とか繋ごうと思うが同じ所に行き直さなければならないし、途切れている所は人があまり歩かない所で難所があったりして難しい。
体力を付け、技術を磨き、果敢に挑戦するようになれば“こだわり”は本物です。

後立山連峰は白馬岳から鉢ノ木峠まで延々70kmを越える日本の背骨で、途中に五竜岳・鹿島槍ヶ岳等のメジャーな山々が連なり、不帰キレットや八峰キレット等の難所があります。
これを線で繋ぐだけでも容易でないのですが、更に日本海親不知からの北方稜線を繋ぎ、裏銀座と繋ぎ合わせ、槍穂と連結し、焼岳から乗鞍岳まで繋ぐとなると世紀の大仕事です。

(第三段階)山塊で地域を捉えたい。 – 線から面への飛躍 –

東京の奥多摩というエリアは多摩川を挟んで南と北に2分されていて、それぞれが環状の稜線を成しています。
南側は武蔵五日市駅を拠点にして秋川を囲んでいる山々をグルッと一回りして戻ればサウスサークルが完成しますし、北側は奥多摩駅を拠点にして日原川を一回りすればノースサークルが完成します。
私は勝手に“奥多摩の二つの円”と言っています。

東京近郊でもう一つの人気スポットは丹沢ですが、このエリアは“丹沢の十文字クロス”です。
南北に丹沢主脈が走り東西に丹沢主稜が走って、鍵十字形に交差しています。

日本アルプスは小学校で習った有名な川に囲まれて縞々の“すじ”を成しています。
有名な山脈は有名な川とセットで考えると分かりやすいです。
信濃川上流と黒部川の間が後立山連峰で黒部川と日本海の間が立山連峰。
天竜川と木曽川の間が中央アルプスで、富士川上流と天竜川の間が南アルプスです。
南アルプスには途中から大井川が入り込んで更に分割されています。

ここでも私が勝手に言っているのですが、“北アルプスは3本の筋”・“中央アルプスは縦一文字”・“南アルプスは5重の厚み”。この筋を全部歩けば日本アルプスが把握できます。

私のロマンはここまでで、この先は時空を越える事になるのかな?誰か知恵を絞って夢を拡大させてほしいと思います。

次回は、縦走登山をプランニングするための3つのポイントと実際の計画例をご紹介したいと思います。

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