やってみませんか?雪山の魅力と入門(2)- 登山の教科書

前回に引き続き、雪山の魅力と入門シリーズ第2回目は、軽アイゼンとストックで登れるスノートレッキングと、アイゼン・ピッケルを要する雪山登山について基礎的なHow-Toを解説したいと思います。

雪山は危険、上級者だけの限られた世界というイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。雪山には入らないと決めつけている人がいて、そういった人たちの多くは冬になると登山をしません。

これはなんともったいないことでしょう。雪山の静寂さ、幽玄さ、美しさを知らないままでいるのです!

1、スノートレッキングからはじめよう

スノートレッキングと本格的な雪山登山とは装備・コースで見分けます。
装備でいえば軽アイゼンとストックで登れる山はスノートレッキング、12本爪アイゼンとピッケルがないと登れない山は雪山登山といえます。

コースで分類すると滑落してもすぐ止まって大きな事故にならないコースはスノートレッキング、転倒滑落が骨折や行方不明のような致命的事故につながるコースは雪山登山、となります。

雪山初心者はスノートレッキングから始めて白く美しい大自然と触れ合いましょう。
膝下くらいまでもぐる新雪の中に踏み込んで目標物を定め、それに向かって一直線に進む。

真白な雪原に自分でルート取りして歩くと、とても爽快な気分になれます。
これもラッセルだが初歩のラッセルだから特別な技術はいりません。

一番目の人は足を交互に出して普通に歩いて行きます。
二番目の人は、前の人が作った穴の後ろの雪を崩して埋めながら歩きます。後続の人も同様にすると、数人の後ろには1本のレールのような道が出来、それから後の人は非常に歩きやすくなります。

ラッセルの先頭から3人目までは重労働なので、一人何歩と決めてどんどん交代していくと楽しいです。
ラッセルの時、ワカンかスノーシューを履くと足の沈み方が少ないので楽になります。

しかしワカン・スノーシュー・つぼ足ではそれぞれ沈む深さが違うので、全員が同じ物を履かないと意味がなくなります。

機能的にはワカン・スノーシューどちらでも良いが、ネーミングなどの“おしゃれ感覚”も大切な要素ですね。
スノーシューを履いて自然観察に出かけ、白い原野の素晴らしさを体験しよう。

スノーシュー (MSR)

ワカンは“シンプルイズベスト”という日本的発想で進化したカンジキ用途一筋の専用ツールなのに対し、スノーシューはカンジキ用途だけでは勿体ないという西洋的発想から、多目的用途を付け加えて改良を重ねた道具です。

ある時はカンジキ、ある時はアイゼン、ある時はスキーの役割を果たすことが出来るのですが、状況に応じて使い分ける技術がないと、その人にとっては無用の長物と化します。

凍結した所やワカンでは歯がたたない極端な急斜面を素早く、力強く登り下りするにはスノーシューが優れていますが、指導者について扱い方の技術を事前に反復練習しておかなければなりません。

一方、“新雪を踏む”というカンジキ用途だけならワカンで良いです。
ワカンは事前練習なしでいきなり履いても支障なく使えます。

2、次は雪山登山!

(1)ステップアップで技術を磨く

スノートレッキングで雪山に興味を覚えたら次は雪山登山ですが、いきなり難しいことに挑戦するのは止めましょう。
度胸や体力だけで解決するほど雪山は甘くなく、時には生命まで懸ってしまいます。
最初は天候の安定した山域の低山が良いから、東京近郊なら丹沢や奥多摩になります。
次はロープウェィや山小屋が冬でも営業している八ヶ岳が良いと思います。

ここで修行した後、中級山岳を目指すなら先ず残雪期に行きましょう。
厳冬期のアルプスは知識・技術と経験を充分に積んだ者だけが入れる世界です。
修行中も常に、自分の腕前が現在どの程度なのか、これから何を目指すのかをしっかり認識していなければ危ないのです。

(2)雪山登山に必要なウエア・装備

生命に関わるのだから費用が掛かっても良い物を選びましょう。

①ウエア

天候の激しい変化に対応しなくてはならないので重ね着が基本です。
保温性・透湿性・速乾性のある素材で薄手のものが良いです。
手袋にも重ね着の感覚が必要で、アウターには防風・防水が求められます。

②登山靴

凍傷を防ぐ為には保温と防水が充分で無くてはなりません。
革靴とプラスチックブーツのどちらを選ぶかは使う本人の人生観で決まります。
プラスチックブーツは手入れ不要だし、履き易いし、気を使わなくても温かく、快適この上ないが、5~6年すると劣化して行動中に突然破損する恐れがあります。
外から見える予兆なしに突然危機的状況に陥るのは決定的に駄目と考えるか、その他の全ての面で優っているから捨てがたいと考えるかの違いです。
“不精な人が危険を覚悟でプラスチックブーツ”ではないだろうか。勿論、破損時の備えは念頭に置くきましょう。

③アイゼン

雪山登山には前爪がある12本爪が標準だが、足の小さい人は10本爪でも可とします。
少し前まではワンタッチ式が良いとされていたが、最近はもっと良いものが出回っています。
プラスチックで出来ているハーネスタイプのアイゼンが簡単に着脱できて外れにくいので、初心者には薦められるます。
靴との相性が重要なので靴を持って行って合わせてから入手しよう。
軽量タイプは氷面への食い込みが弱い欠点があります。

12本爪アイゼン (GRIVEL)

④ピッケル

身長にもよりますが、60cmから75cmくらいの物が標準で、手に持って腕をダランと下げた時、ピッケルの先が地面に触れない長さが良いです。
極端に短いタイプや先端が曲がったタイプは登山の目的が違うから止めよう。

ピッケル (GRIVEL)

(3)雪山登山で必要な基本技術

雪山登山で無くてはならない物がピッケルです。
急斜面など滑落の恐れがある所は2点支持歩行と言って、足2本と手1本のうち、どれか2つを常に確保しながら歩く技術を用います。
この時の手1本を補佐するのがピッケルの主な役目ですが、他にもバランス保持やカッティング等いろいろ使い道があります。
雪山の歩き方には次の3通りがあり、状況によって使い分けます。

①平地や緩斜面ではアイゼン無しのフラットフッティング

フラットフッティングとは雪面に靴底をフラットに下ろして歩く技術で、靴底全てを使うから大きい摩擦力が得られます。

②急斜面ではキックステップ

キックステップとは靴の一部を雪中に蹴り込んで歩く技術です。
登りでは膝から下を振り子状態にして靴のつま先のエッジを蹴り込み、下りでは靴のかかとのエッジを雪面に鉛直に踏み込みます。
いずれの場合も上体を真っ直ぐに起こし、蹴り込んだわずかな足場に水平に立つよう体重移動するのがコツです。

③硬雪・凍結ではアイゼン

12本爪アイゼンを履く以上は体に馴染むまでしっかり練習してから山に入りましょう。
技術の無い者が滑落の恐れがある所で12本爪アイゼンを履くと、事故の原因を誘発して返って危険となります。
アイゼン歩行の基本は次の3つです。

イ. フラットフッティング
ロ. 足を引きずらない
ハ. 爪を自分のスパッツに引っ掛けない

登山中無闇にアイゼンを履くのは止めよう。足に1kgをつけると背中に5kg背負ったくらい疲れると言われるほど足腰に負担がかかります。
履き慣れていないと転倒して足首や膝を痛めるし、アイゼンを履いて尻セードすると引っかけて足を骨折する危険があります。

最後に

いかがでしたか。
雪山登山には相応の装備と技術が必要になりますが、本稿で示した通り順番にステップアップしていくことで、けっして難しいものではありません。

雪山のすばらしい世界をしらないことは、登山をする人にとって大変な機会損失だと思いますし、年間通した登山のための体力維持の観点でも大きなビハインドになりえますので、是非トライしてみてください。

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