身の安全を守る!登山における10の危険箇所の通過法

山登りをしていると、思いがけず危険な場所を通過することになる場合があります。
戸隠山アリの戸渡りのように狭い尾根を馬乗りになって渡る所もときにはありますが、無雪期に一般道を登山する限り、初めから分っている危険箇所を初心者が登山するということは稀です。

多くのケースは思いもかけずに危険箇所に遭遇するもので、登山道が崩壊していたり、悪天候で状況が悪かったり、メンバーの一部が疲労や病気で体調不良に陥った場合などです。

本稿では、一般登山道での代表的な10の危険箇所とその対処法を紹介することで、思いがけずに危険箇所に遭遇してもあわてず、落ち着いて行動するための手助けになれば幸いです。

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危険箇所には2種類ある

危険箇所には絶対的危険箇所と心理的危険箇所の2通りがあります。
絶対的危険箇所は何かあったら致命的事故に陥る場面で、難易度でなく危険度で判断します。
ロープ等の安全措置をセットすることに自信が無かったら、迂回するなり、引き返すなり、停滞するなりの確実な行動をとってほしいと思います。

心理的危険箇所はメンバーが怖がって萎縮している場合で、ロープを張りスワミベルトとカラビナを装着してやれば精神的況縛から逃れて、案外簡単に通過できたりします。

時間ロスを理由に安全措置を省略する人をみますが、メンバーの実力によっては苦労して歩くより返って時間節約になります。

一般道での危険箇所

(1)急斜面の下り

スリップしたり浮き石に乗ったりして転倒し、怪我をするケースがあります。歩き方の練習をして、体重移動のことやフラットフットの方法を覚えましょう。
段差を飛び降りると一瞬にして膝を痛めます。段差で心配ならお尻をついても良いから、無謀なことはやめてほしいと思います。

(2)滑り易い場所

赤土・木の根・木道・苔の生えた岩場・丸木橋・凍結道・濡れたところ等、滑り易い道があります。
スリップしてバランスを崩し、転倒滑落に陥らないためには静荷重・静移動が重要です。
滑り易い所では歩幅を少し広めにとり、体重移動を素早くやるのがコツです。

(3)ガレ場

人の手で動かせる程度の岩石がごろごろしている場所をガレ場と言います。
ぐらぐらする浮石に足を取られて転倒したり、石の割れ目に足を挟んで捻挫・骨折する例があります。
歩き方には練習と共に経験も必要です。

(4)ザレ場

ガレ場の岩石をもっと小粒にした場所をザレ場と言います。
スリップしたら尻餅をついて転んでしまった方が返って安全で、格好を気にして耐えると捻挫・骨折の原因になります。
事故例の中でザレ場の捻挫・骨折がとても多いのですが、殆んどのケースが何でもない広い場所で、堪えてひねった足首に自分の体重が乗ってしまった結果です。

(5)痩せ尾根

1人~2人がやっと通れる狭い尾根を痩せ尾根と言います。
突風に煽られたり、対向者を避ける時バランスを崩して転・滑落する例が多いので注意しましょう。

(6)崩壊地

登山道の一部が悪天候などで崩壊している場所を崩壊地と言います。
崩壊の程度を見極めて通れるかどうか判断しましょう。
通行中さらに崩れたり、上部から落石があってはいけないから注意しなければなりません。

(7)岩場

スリップしてバランスを崩したり、足を踏み外して転・滑落しないように三点確保のバランスクライミングを心掛けましょう。
自然界の物は信用出来ないので、いきなり手掛かり・足掛かりに体重を掛けてはいけません。
浮いていないか、もろくなっていないか確認した後、ジワーッと重心を移すようにしましょう。

危険な場所は誰でも怖いですが、緊張し過ぎて体が硬張ったら柔軟性が失われてもっと危ないです。
“自分は猫だ、猫だ”と暗示にかけてバランス良く歩くのも一つの方法です。
ザックの横に引っ掛かりやすい物が付いていないか、ストックをザックにしまったか等、身支度の不注意は事前に防ぐようにしましょう。

ザックカバーは岩角に引っ掛けたり、風を含んで体を飛ばすから核心部ではザック内にしまいます。
雨上がりの午後は落石が多いと言われます。常に上部に注意して行動し、可能性があるなら休憩中も上を見ながら立って休みましょう。

「ラーク」と聞こえたら声がした方を見るのでなく、自分の上を見るようにします。石から目を離さず小さく避けるようにします。慌てて大きな動作をすると勢い余って転落するかも知れません。
間近に迫って避けきれない時は自分のザックで受けます。その可能性がありそうな場所では予めウエストベルトを外しておきましょう。

岩稜帯は踏み跡が消え易いのでルートを誤って脆い岩場に迷い込むことがあります。
気付いたら来た道を引き返しましょう。近道のつもりで、思い込みで進むと更なる危険地帯に深入りすることになります。

リーダーはメンバーの行動に気を配り、前の人との間隔を適度に空けさせましょう。
何かの弾みで接触すると前の人がバランスを崩します。
初心者の間にベテランを配置すればパーティー全体がスムースに行動出来ます。

(8)鎖場・梯子場

梯子にしがみつかないこと。理由は『岩登りと三点確保』の中の“ハンドホールドの捉え方”で詳しく説明しています。
鎖場は腕力で強引に登らずに足掛かりを重視し、鎖はバランスの補助として手を添えるだけに留めましょう。
素手の方が強い握力が得られるから手袋は外した方が良いのですが、リーダーが一つ覚えで“手袋を外せ”と指示してはいけません。冷え性の人が凍えた手で握ったらもっと悪い結果になるので、外すかどうかは本人の判断にまかせましょう。

(9)沢の徒渉

増水した沢を無理に渡ろうとしてはいけません。
流れが緩やかであっても、安全に渡れる深さの目安は膝までです。
浅くて渡り易い所を探して2人以上で肩を組み、斜め下流側に水圧を逃がしながら渡ります。
足を水面上に上げないように擦り足にし、腰を落して川底を確認しながら渡りましょう。
流れが強い時は下流に滝がないことを確認した方が良いです。
雪溶け水は足が凍るほど冷たいので靴を脱がないで渡ります。

(10)雪渓

白馬岳大雪渓が人気ルートであるように夏の一般登山でも雪渓を歩くことがあります。
注意するのは溶け始めた雪渓で、厚さが薄くなった所を歩くと踏み抜きの危険があります。
雪渓は中央部が水の温度で溶けて薄くなり、両端が岸の地温で溶けてクラック状になっているので、左右共に巾の1/4程度が安全です。
しかし、その場所もいつかは薄くなるのだから、溶けて崩壊寸前の雪渓には近付かないようにしましょう。
落石は音もなく雪面を滑ってくるから、常に上方に注意しよう。

最後に

いかがでしたか。思いもかけず危険箇所に遭遇した場合、おちついて冷静に行動することが大切です。
そのためには、本稿で解説した代表的な危険箇所の特徴と対処法を頭にいれておくと良いでしょう。
あわせて、安全を確保するためのロープワーク(近日公開予定)についても参照いただければ幸いです。

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当サイト「GoALP – 山にいきたい、学びたい」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する2期目「安心登山勉強会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?

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