二年かけて山岳指導のプロから登山の様々な知識や技術を学べる「JMIA登山講習会」に潜入し、その内容をレポートするこの企画、今回レポートするのはロッククライミングです。
2020年の東京オリンピックでスポーツクライミングが競技に採用されたことは記憶に新しいかと思いますが、その他にも近年のボルダリングブームなどクライミング系のアクティビティに注目が集まっています。
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「JMIA登山講習会」でも、もちろんクライミング技術は重要なテーマ。ただし競技を目的としたスポーツクライミングを主眼にするのではなく、あくまで山を安全に登り降りするための技術を主眼としています。この技術は、一般の登山でも岩稜帯を通過する際や、より本格的なバリエーション登山や沢登りをする際にも必須のスキルになってくるんです。
そんなクライミングに関する講習の様子をレポートしたいと思います。
広沢寺クライミング講習 体験レポート
目次
2018年7月某日、予報では人の体温を超える猛暑日、神奈川県は小田急本厚木駅に午前8時に集合。今回の参加者は講習生、スタッフ含めて8名でした。
今回の講習場所は広沢寺の弁天岩。丹沢東部に位置する岩場で、埼玉県飯能の日和田の岩場とともに古くから関東の初級・中級クライマーに親しまれているゲレンデです。一行はタクシーで岩場の近くまで向かいます。
タクシーを降りると今日登る岩場が見えてきました。初心者の僕のファーストインプレッションは「あんなところ本当に登れるんかいな・・・」です 笑。
本日の講習ポイント1「スメアリング」
広沢寺の岩場はいわゆるスラブ岩で、凹凸が少ないなめらかな一枚岩で構成されている部分が多いんです。凹凸が少ないということは、手がかりや足がかりとなる場所が少ないため、「スメアリング」と呼ばれる足裏の摩擦を利用して登攀するスキルが必要になります。今回の講習ではこのスメアリングを徹底的に練習しました。
摩擦を効かせるためには、足の力だけではたかがしれているので体重をかけきることが重要なんです。両足に体重がのっている状態だと力が分散されるので、片足に体重を乗せ、それと同時に足をこいで登る、そんなニュアンスで何度も練習するとだんだんコツがつかめてきます。
本日の講習ポイント2「ビレイ」
ビレイとは、クライマーが墜落して地面に叩きつけられないようパートナーがロープで安全を確保する動作のことです。今回は、トップロープといって岩場の上部にある安全な支点にロープをかけ、ロープの一端をクライマーに結び、もう一端をビレイする人に結び、クライマーが登っている間に下から確保する方式を練習しました。
クライマーがミスして途中で落ちてしまっても、ビレイヤーが下から引っ張っているので、支点を軸に宙ぶらりんになるだけで落ちずに済むという原理ですね。
動作としては、まずクライマーが登っているときにはロープを手繰り寄せ、万が一落下しても落下距離が短くなるように調整していきます。クライマーの登るペースに合わせてたぐる必要があるので、なかなか忙しく、腕が筋肉痛になりそうです。加えてこの猛暑・・・。でも万一の場合、人の命がかかっていますので、そんなことは言ってられません。
クライマーが登り切ると、今度は安全に下ろす作業です。今回はロワーダウンといって、クライマーは「テンション!」という掛け声とともにロープに体重を預け、言ってみれば吊るされた状態で岩壁を正面にした状態で下っていきます。最初はこの、ロープに体重を預ける瞬間の恐怖感たるや・・・。振り向けば20m以上はある高度感のある場所でロープに吊るされるわけで・・・、でもまぁすぐに慣れます。
このとき、ビレイヤーはクライマーの体重で上に引っ張られそうになるのを耐えながら、今度はさっきとは逆にロープを送り出すことで徐々にクライマーをおろしていきます。
ちなみに、ロープを手繰り寄せたり送り出したりするために使うギアが「ATC(確保器)」です。クライマーが降りたあとはその摩擦熱でかなり熱くなっています。
本日の講習ポイント3「懸垂下降」
懸垂下降はロープを使って崖を安全に下るための技術なんです。よく消防隊員の訓練とかで建物の屋上からロープで降りてくるアレですね。
実際の登山シーンにおいて、ロープなしでは下れない場面に遭遇したらどうしたらよいでしょうか。登りの場合はそこが急峻ながけであっても案外登れてしまいます。登ったはいいけど道が違うので引き返したい。でも今登ったところはとても降りられない・・・。懸垂下降は、クライミングだけでなくこういったシーンで役に立つ安全登山技術です。
懸垂下降は、簡単に言えば吊るされたロープをつたって崖の下に降りるためのシステムおよび下降の技術です。今回の講習ではシステムの構築はインストラクターにおまかせし、そのシステムを使って自分で降りる技術を練習しました。
個人的に復習も兼ねて手順のまとめです。
まずは、セルフビレイをとります。崖に垂らされたロープと自分を連結する作業をしている間に油断して自分が落ちないよう、自分の命綱を安全な場所につなげます。
次に、安全な支点にかけられて垂れ下がったロープを伝って下るわけですから、そのロープと自分を連結します。このときもビレイで使ったATCを使います。エイト環と呼ばれるギアを使うこともあります。
ATCにロープをセットする際、垂れ下がっているロープを適量もちあげてATCにセットするのですが、これが意外に重いです。支点を軸に合計50mあるロープを持ち上げるわけなので、重量もそれなりありますからね。
ATCのギザギザのある方を垂れ下がっている側のロープになるようにセットします。この状態で、下降できる準備が整います。まだセルフビレイした状態のまま、実際に岩壁を下降する体制を作ります。このとき何か不備があってもセルフビレイが効くので墜落することはありません。
下降の動作としては、右手もしくは左手を腰の位置でロープを掴みブレーキをかけます。その掴んだロープを上に送り出すことでATCを介して自分の体を降ろしていきます。
下降に問題ないことを確認できたら、いよいよセルフビレイを解除します。右手を使ってロープを制御するのであれば、セルフビレイの解除は必ず左手で行い、右手は絶対にロープから離してはなりません。右手がブレーキになってますからね。逆もまた然りです。
セルフビレイを解除してロープに体重をかける瞬間は、さきほどのロワーダウン時以上に緊張します。なにか不備があればその瞬間真っ逆さまですから・・・。でもそうならないように確認してから行うので、これも3回やればだいぶ慣れました。
右手でロープを送り出し、左手は送り出されるロープに手を添える感じで、下を確認しながら下降していきます。このとき壁と足が垂直になるような体制で降りると降りやすいと思いました。
講習後は反省会
一通りプログラムを終了したあとは反省会と称して、猛暑で酷使した体をいたわりに皆でビールを摂取しに笑。
今回の通称「下山のグルメ」は本厚木駅近くの昼間から飲めて山や御用達の「十和田」へ。山にいったあとにいく仲間との懇親会は話題も尽きずとても楽しいものですね〜。みなさま本当におつかれさまでした!
山の仲間作りは重要!
今回はゲレンデでの講習会ではありましたが、山に登るにはあらためて仲間が重要だなと思いましたね。自分も含めてですが、山に単独で入る方も多いと思います。リスクはもちろんありますが、しっかりとした技術や知識、リスク管理を前提にそれはそれで一つの魅力ある登山形態であると思います。
でも、クライミングをはじめ沢登りや雪山・バックカントリーなどは単独ではほとんど無謀です。そこには、行動をともにする仲間が必要です。山をより広く、深く楽しもうと思ったら一人ではどうしても限界があります。
ビレイ一つとっても、それはパートナーの命を預かる行為ですし、クライマーもパートナーのビレイを信用して初めてクライミングが成り立ちます。このような冒険の仲間は作りたくても周りにやっている人がいないとなかなか難しいものです。
そういった観点で登山の仲間作りというのは、大きな課題であると思います。挑戦したくても、指導してくれて一緒に登ってくれる仲間がいないとはじまりません。
JMIA登山講習会は、地図読み・クライミングや縦走など登山の総合スキルを学ぶ場であると同時に、登山の仲間づくりもできる、まさに一石二鳥のプログラムだと思います。ともに山を学んでいくと自然と山の仲間になっていくもので、そういう観点でもこのJMIA登山講習会はとても秀逸なプログラムだと感じています。
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ということで、今回は以上です。「JMIA登山講習」体験レポートまた次のレポートをお楽しみに!
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登山の総合スキルを体系的に学びたい方必見!
当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?
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