遭難の要因No1「道迷い」を防ぐ地図の読み方の基本 – 登山の教科書

山登りをしているとき、ふと気づくと登山道を外れてしまい、現在地や進むべき方向がわからなくなってしまったり、マーカーやリボンが見つけられず不安な思いをしたことはないでしょうか。すぐに登山道に戻れれば問題はないのですが、そうでない場合は遭難という事態に陥ってしまいます。
 
警視庁が発表した平成27年における山岳遭難の状況によれば、遭難の原因のトップは道迷いで、およそ4割を占めています。

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 このような深刻な事態を招く道迷いを避けるためには、現在自分がいる位置、高度、目的地までの方角を常に把握している必要がありますが、それをするには山と高原の地図のようなガイドマップだけでは不十分で、地形図・コンパス・高度計とそれを使いこなすための知識が必要になってきます。
 
また、里山や低山などはガイドマップに記載されていない登山道や仕事道も多くあるため、地図読みの知識があるのとないのとではリスクが大きく違ってきますし、バリエーション登山とよばれる登山道に縛られない登山形態を行う場合には地図読みは必須の知識でもあります。
 
そこで本稿では、登山における地図の読み方の基本を解説したいと思います。

はじめに – 山の地図と街の地図の違い

初めての街を歩く時は駅に掲載された地図を見て、タバコ屋や郵便局や信号等の目標を頼りに歩くルートを決めます。山にはタバコ屋はありませんが、それに替わる目標として樹木や遠くの山があり、地面の高さ・低さがはっきり分かります。ちなみに海には太陽と星以外何の目標も無いので、山の方が恵まれているといえますね。
 
街の地図は限られた範囲だけで縮尺が大きいから文字や絵を使って目標を表現出来ますが、広大なエリアの山でそうはいきません。そのため山の地図は記号等様々な約束毎で成り立っており、それを覚えて解読して初めて情報となります。

 1、登山に利用する地図の話 

山で使う地図には国土地理院発行の25000分の1地形図と出版社発行のガイドマップがあります。
 
地形図は航空写真によるので等高線等の地形は正確ですが、空中写真に写らない徒歩道は怪しく、国土地理院の前身は昔の陸軍だから地形図は全国を網羅していますが、もともと登山用に作られたものではありません。
 
ガイドマップは人が歩いて調べているから登山道ははっきり分かりますが、地形表現がラフな上に縮尺が小さいから微妙な地形が読み取れません。しかし、ガイドマップは登山用に作っているので登山の為の情報が多く、デフォルメされているから分かり易いといえます。
 
どちらを使ったら良いかという話については、きちんとした登山をしようと思ったら両方使う必要があるということになります。事前準備の段階でガイドマップの登山情報を地形図に写し取っておくのがベストです。
 
現在の地形図は国際基準に従って作られています。丸い地球を平面的に描くのだからいろいろ無理があり、同じ日本の中でも北と南で大きさが違ってくるのと、磁場は年々動いているので、10年前の古い地形図と今のとでは西偏の数字も違うことは知っておくべきでしょう。
 
国土地理院ではこの外に5万分の1地形図・20万分の1地勢図・50万分の1地方図を出していますが、登山にはあまり使われていません。

2、地図読み三種の神器

地形図・コンパス・高度計を地図読み三種の神器といいます。

(1)25000分の1地形図

地形図の右側枠外に記号の解説があり、その下に西偏度数と説明書があります。ここを注意深く読み、主な記号は覚えてしまわないと地図読みは出来ません。地形図の根幹をなすのは等高線なので、読図とは等高線の解読であるといえます。 

(2)磁石(コンパス)

文房具店でコンパスと言うと丸い磁石部分だけ渡されるから注意しましょう。登山で使うコンパスは正確にはプレートコンパス(シルバーコンパス)と言って、プレートと磁石をセットにして歩行用に加工したものです。
 
使用する際は磁気に影響されないように鉄類・ラジオ・トランシーバー・携帯電話を近づけないようにしよう。高圧電線・鉄道・鉄塔・火山にも磁気があるので、その近くでは正しい方角を指してくれません。
 
保管中に強い磁気の影響を受けて、北を向くべき赤い針が南を向く「磁極の逆転」があるので、家を出る前に確認しよう。逆転していたらマグネット(多くの人が冷蔵庫扉でメモを止めている小物)で赤い方から白い方に向かってサッとなぞるように滑らすと直ります。

(3)高度計

似た地形が多くコンパスと地形図だけでは現在地を特定することが難しいので、等高線の測定器である高度計を併用することになります。気圧の変化量を高度の変化量に連動させる仕組みなので、基準になる気圧が変化すると表示が変化してしまいます。従って、基本操作として登山口等のはっきり分かる所で高度補正してから出発しましょう。登山中も山頂等の標高表示に合わせてその都度補正すれば正確な高度を読む事が出来ます。 

3、地形図は見るのでなくて読む

(1)真北と磁北を知る

地形図において、上は北極を向いていてこちらを真北と言います。一方、地球の磁場がカナダにあって磁石はそちらを向くから磁石の極と解釈してそちらを磁北と言います。
 
磁北は真北より少し西にズレていてズレ方が場所によって異なります。日本でのずれは5°~10°で北に行くほどズレが大ききくなります。地形図の右側枠下に西偏何度と書かれていてそのエリアのズレを表わしています。地形図を読むたびにズレを調整するのは面倒だから、登山前の準備として地形図に西偏何度の線を引いておきます。この作業を“磁北線を引く”と言い、地図を買ったらすぐ全面に引いてしまうと良いです。
 
たくさん引けば地図読みには便利ですが、線だらけではうっとうしいし作業も面倒だから普通は4cm間隔で引きます。25000分の1地形図の4cmは実際の1kmだから、そうしておくと距離の目安にも使えます。分度器と長い物差を使って初めの1本を引き、後はこの線に平行に4cmずつズラシながら引いていきます。

(2)縮尺を知る

縮尺が25000分の1だから地図上の1cmは実際には250mです。登山中、地図を読むたびに計算しているわけにいかないですから、この関係は直感的に分かるようにしましょう。しかし、昔からの教えの“勘を養うことが大切だから拡大コピーするな”というのは変えたいと思います。特に中高年者は余裕がなく、いちいち老眼鏡を取り出す暇がないから拡大しなければ地形図は使えません。妥協案としてカラーコピーを200%と決めてしまって、常に同じ拡大をし、このサイズで自分の勘を身に付けるのはどうでしょうか。

(3)等高線を知る

25000分の1地形図では高度差10m刻みで細線を引き、高度差50m刻みで太線を引いています。これが等高線で、細線を主曲線・太線を計画線と言います。
線と線の間隔が狭いところは急斜面であり、線と線の間隔が広いところは傾斜が緩やかとなります。山頂部は等高線が丸く円を描いています。しかし、同じく丸く円が描かれていてもその中に矢印が示されていれば凸部でなく、凹部だから注意しましょう。
 
山頂から外に張り出しているように描かれている等高線は尾根を表現していて、山頂に向かって食い込むように描かれている等高線は谷(沢)を表現しています。尾根と谷(沢)は必ず隣り合って交互に並んでいます。大昔は“だんご”の形をしていたのに雨が流れた侵食作用で次第に谷(沢)が出来、残された所が尾根になったのでしょう。

4、磁石(コンパス)の使い方

(1)ベアリング法 

これから進むべき方向を確かめる時のやり方がベアリング法で、後ろのイラストに手順を示します。道に迷ってからコンパスを使うのでなく、道に迷わないようにするのが読図です。登山口でしっかりコンパスを使って進路を確かめ、歩行中もポイント毎に確かめながら登山しましょう。 

(2)山座同定

コンパスを使って地形図を正置(整置)させ、遠くの山の名前を調べるのが山座同定です。山頂や尾根上のゆったり広い場所で、周囲の景色を眺める時に用います。地形図を地面に広げ、その上にコンパスを置いて、赤針が磁北線と平行になるまで地図を回転させれば正置(整置)が終了します。 

5、読図読みに習熟する

地図読みの技術を一通り覚えても、実際に使いこなせなければ意味がありません。その為には何度も繰り返し練習し、読図力を身に付けなければなりません。尾根が盛り上って見え、谷がへこんで見えるようになりましょう。
 
等高線の混み具合を見て登山の難易が判定出来たり、距離を読んでこれからの行動時間が推測出来るように早くなりたいものです。実際に歩いた距離・高度差・所要時間・疲労度をチェックし、それが地図でどう表現されているかを記憶に留めておくと良いと思います。それが自分の経験上の尺度となって結果として“勘”が身に付くことになります。習得すれば地形図を見ただけでその日の山行の概要が想定出来るようになるでしょう。

磁石(コンパス)の使い方

手順1 磁石に地形図を覚えこます

  1. 地形図上で磁石の長辺を目的方向に重ねます。
  2. 回転盤矢印と磁北線が平行になるように回転盤を回します。
  3. 磁石を地形図から離します。

手順2 地形図を覚えこんでいる磁石を体の正面に密着させる

磁石の大矢印の向きを体の正面に向けて密着させます。 この時はまだ、体がどちらを向いていても構いません。

手順3 磁石が示す方向は地形図の目的方向だから、そちらに体を向ける。

磁石を体に密着させたまま、赤針と回転盤矢印が 重なるように体を回転させます。足を止めて上半身だけ捻っては駄目です。 足裏を小刻みに動かして体を回転させます。 

 手順4 顔を上げ、そのまま歩き出して良い。

最後に

いかがでしたか。山登りで道に迷わないための地図の読み方は、知識だけでは身につきません。ぜひ山に出かけた際に実践し、経験を積んで体で覚えるようにしましょう。
 

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