スノーシューを履いて雪山を走るスノーシューイングの国際大会が、2020年2月16日に新潟県は妙高市で開催されました。
オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、スペイン、スウェーデン、アメリカの実に10ヶ国から100名以上の選手がこの日本は妙高に集い、熱いレースを展開しました。
スノーシューレースはいわば足かせを履いた状態で、しかもロードやトレイルと異なり、一歩一歩沈み込む雪面を走る行為は想像以上にハード。体感的にはトレイルラン以上の運動強度があるように思います。
そんな過酷なレースに僕も大会スタッフ兼選手として参加してきましたので、その様子をレポートしつつ、レース後に日本人1位、2位を飾った高村選手・郡選手のお話も伺うことができましたのでご紹介します。
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選手紹介
高村 純太(ケンコー社サポートアスリート/ZENサポートアスリート)
【トレイルランニング】
2019年
OSJ 新城トレイル11K 総合3位
OSJ MAHIRUSANCHI TRAIL 50K 総合3位
OSJ 安達太良山トレイル10K 総合2位
志賀高原マウンテントレイル 40km 総合6位
トレラン益子 総合3位、長瀞アルプストレイルレース 総合3位
【スノーシュー】
2017〜2019年 全日本スノーシューグランプリシリーズグランプリチャンピオン
2020年 世界スノーシュー選手権(妙高)総合16位(日本人1位)
郡 恵樹(ケンコー社サポートアスリート)
2012年 世界クロストライアスロン選手権(アメリカ) U23 4位
2013年 全日本マウンテンバイク選手権 エリート 46位
2013年 Biathle & Triathle 世界選手権(キプロス) Biathle 12位 Triathle 10位
2015年 世界マウンテンバイクオリエンテーリング選手権(チェコ) 完走
2017年 全日本山岳スノーシューイング・レース in 日光 15km 2位
2018年 世界スノーシュー選手権(スペイン) 43位
2019年 横浜・海の公園アクアスロン大会 ショート 優勝
2020年 世界スノーシュー選手権 in 妙高 20位
開会式
今年は異常な少雪ですが、それでも美しい妙高山が迎えてくれます。
そして妙高山の麓にある地元のコミュニティ施設、妙高高原メッセに集まった各国の選手を、和太鼓の生演奏でお出迎え。激しく轟く和太鼓の演奏に、各国の選手たちも盛り上がります。
続いて、国ごとにステージにあがり国家斉唱と選手の紹介を行います。
我々日本選手団も。
選手紹介が終わると、今度は和太鼓のリズムにのりながら「セイヤッセイヤッ」の掛け声とともに選手全員で踊りながら交流を深めました。
前夜祭
そのあと場所を移して、「妙高高原ビール園タトラ館」でお待ちかねの前夜祭。
嬉しいことに妙高地ビール飲み放題で、明日はレースなのについつい飲みすぎてしまいます。
トレイルランナーの星野由香里選手も参加しており、みんなで盛り上がりました。
レース当日
いよいよ当日の朝。レースは朝10時スタートと比較的ゆっくりできました。
なお今年は少雪の影響もあり、通常12kmのコースが直前に9kmのクロスカントリーコースに変更がありました。
去年の日光大会でご一緒し、今回宿も同じ部屋だった郡選手とウォーミングアップがてら3kmほどコースを試走しましたが、僕にとってはすでにウォーミングアップの域を越えてしまい、レースに一抹の不安がよぎります笑
こちらは当日のブリーフィング中の1コマ。いくら暖冬とはいえ、上半身裸とは!我々とは体温が違うようですね〜。
そして、いよいよレーススタート!
トップ選手たちはものすごいスピードで走っていきます。それにつられて僕もついオーバーペースで走ってしまい、気づいたら1kmも立たないうちに心肺が悲鳴を上げ始めます。
こんなふうに、雪を激しく蹴り上げながらレースは進んでいきます。
実は、レース中の撮影がスタッフとしての僕の任務で、自撮り棒を使ってアクションカムを手に持って走りながら撮影していましたが、もうキツすぎてそれどころではなく、何度途中で投げ捨てようと思ったことか・・・。
もはや撮影する角度がめちゃくちゃですが(笑)、それでもなんとか完走!
ゴール時の映像見返したら、苦しすぎてよだれをたらしながらゴールしてました笑(見苦しいので掲載は自粛)
動画も撮影していますので、ぜひご覧ください!
打ち上げ、閉会式
レース後は近くの温泉に浸かり、雪で冷え切った足を解凍したら再び会場に戻り嬉しいご褒美、地ビール飲み放題。
各国の選手たちもお互いの健闘を称え合いながら、宴会状態。
強かったスペイン軍団。
最後に表彰式を行い、閉会の運びとなりました。
日本人1位、2位の高村選手と郡選手は残念ながら今回は表彰台に登ることはできませんでしたが、そんな中、われらがJMIA登山講習会第2期生でもある駿谷選手が、年代別で入賞!
駿谷さんは、昨年のPTL(La Petite Trotte à Léon、UTMBの姉妹レースでトルデジアンやトランスジャパンアルプスレースなどと並ぶウルトラレース)の完走者でもあり、さすがです。おめでとうございます!!
選手インタビュー
それでは、日本人1位の高村選手、2位の郡選手の大会を終えての声をお届けします。
— まずは簡単にお二人の自己紹介をお願いします。
高村選手:高村 純太(たかむら じゅんた)です。新潟県は、南魚沼市出身です。豪雪地帯という地域柄、幼い頃からスキーに取り組んでいました。スポーツは陸上競技の短距離を2014年まで行い、その後は走る距離を少しずつ伸ばしてマラソン、トレイルランニングへと進み、スノーシューは2016年からレースへ参戦しています。
郡選手:郡 恵樹(こおり さとき)です。出身は愛知県で、スノーシューをはじめる前はトライアスロンをやっていました。現在は、スノーシューを含めランニングに焦点を当てて活動、練習しています。
— お二人 はアウトドア用品を取り扱うケンコー社のサポートアスリートでもあるんですよね。
高村選手:はい、僕はサポートさせていただいているケンコー社で取り扱っているgarneauのスノーシュー「コースBOA ARC」を愛用しています。魅力はなんといっても1ペアで0.74kgという軽さ。
— それはめちゃくちゃ軽いですね!
高村選手:「スノーシューで走る」を例えると「足に重りをつけて砂浜を走る」といったところでしょうか。加えて雪がスノーシューのデッキに乗るので、重さが増します。
足を上げるのも大変な状況の中、走ろうとするとかなりの負荷になります。
「コースBOA ARC」の軽さであればスノーシューランニングの負荷を軽減され、足さばきも軽快になります。
スノーシューイングレースでは軽さが最大の武器になると思います。レースだけでなく、スノーシューハイキングでも軽いので快適な歩行が可能です。
郡選手:自分ももちろん、このガノー(GARNEAU) Course BOA ARCを使用していますが、最大の特徴は、軽量であり、幅を含めコンパクトなデザインに設計されていることです。そのため走りやすさに直結します。
— 郡選手に宿でスノーシュー見せてもらいましたが、本当に軽かったですね。自分も欲しくなりました。
高村選手:あとは、ZENサポートアスリートとしてサプリメントを使用させていただいています。
レース前に「トラ」を摂取し、アップをすると身体が暖まりスタートからフルスロットルで行けました。
スノーシューイングレースでは雪山なので気象条件によっては極寒の中でのレースになり、寒くて身体が動かないこともありました。
「トラ」を利用させていただいてからは寒い中でのレースも、スタートからしっかり身体を動かすことができています。こちらもぜひ!
郡選手:ケンコー社からは、トレイルランニング等のレースや練習に使える様々な商品を提供させて頂いています。お薦め商品が沢山ありますが、中でもインジンジ(injinji)の五本指ソックスは履き心地が抜群で、足へのダメージも軽減され、今大会でも使用させて頂きました。
— それでは、改めてレースお疲れ様でした。そして、日本人1位・2位、おめでとうございます!!高村さんは総合でも16位と健闘しましたが、レースに望むにあたって、目標などはありましたか?
高村選手:総合10位以内を目標に掲げ、大会に挑みました。少雪などの影響もあり、予定していたコースも変更。クロスカントリースキーコース3周になることを聞き、高速レースになることが予想されました。2018年のスノーシュー日光大会にスペインの選手と走りましたが、その速さに衝撃を受けました。
— スペインチームは今大会でも強かったですよね。何か対策はあったのでしょうか。
高村選手:そうですね、世界選手権ではそのスピードに少しでもついていけるように普段からスノーシューの練習を多く取り入れました。
— お二人とも、改めてレースを振り返っていかがでしょうか?
高村選手:結果は総合16位(日本人1位)と目標としていた順位には届きませんでしたが、中盤までは10〜16位集団の中でレースを進めることができたので内容には満足しています。
— ありがとうございます。郡さんは?
郡選手:世界9ヶ国から選手が集まり、国際色豊かな大会だったと思います。やはり、競技人口も多く本場であるヨーロッパやアメリカが上位を占めましたが、彼らの経験値の高さには驚かされます。自分も最後まで集中を切らさず走り切ることができ健闘できたと思います。
— お二人にとって、スノーシューやレースの魅力とは何でしょうか
高村選手:まず、スノーシューに難しい技術はありません。スノーシューを取り付けて雪原に飛び出すだけです。無積雪では藪で行けないルートを歩いたり、新雪をフワフワ歩けるのがスノーシューの魅力です。 一面真っ白な銀世界は本当に美しいです。
郡選手:靴のままでは決して行くことのできない雪面に身を置くことができること、銀世界の中で走れることが一番の魅力だと思います。
— 真っ白な雪原、銀世界の静寂を歩くのは格別ですよね〜。
高村選手:レースに関していえば、雪の状況や時期によって、同じレースでも条件が異なるのが楽しめる魅力だと思います。積雪量によってコース状況も変わってきます。新雪ラッセル区間があったりもします。(過去には新雪ラッセルのみの大会も…)
— それは相当大変なレースでしたね。
高村選手:また気象条件に応じた服装、雪質などもレースでは重要になってきます。ただ基本的には雪山を簡単に楽しめるコース設定になっているので、初めての方でも楽しめると思います。
郡選手:しかも雪の上なので、実はロードやトレイルを走るより足に優しいんですよ。
— 確かに、足への衝撃は少ないかもしれませんね。続いて、お二人は普段はどのようなトレーニングをしているのでしょうか。
高村選手:ウィンターシーズンは、スノーシューで登山やハイキングをしており、グリーンシーズンは登山がメインですね。
郡選手:都市部に住んでいるので、普段はロードでの練習や、トラック練習を取り入れています。家の近くは坂道が多いので、その利点も活かしてコースを考えながら走っています。雪シーズンになれば、数回ほど雪山に行ってスノーシューの練習をします。スノーシュー特有の動きである登りと下りに重点を置きます。
— スノーシューイングレースは、想像以上に負荷が高く過酷と思います。少しでも負荷を減らして走るコツなどはあるでしょうか?
高村選手:とにかくスノーシューを履いて歩く。まずはスノーシューの重さに慣れることだと思います。
郡選手:極力、圧雪されている部位の上を走ることです。それが多少の遠回りになってしまっても、圧雪されたルートを選ぶことは、負荷を減らし、タイムを短縮するための大きなメリットです。
— なるほど、大変参考になります。ここでちょっと宣伝になりますが、JMIA登山講習会マネージャーで、本大会にも技術部長として参画されている水上さんがスノーシューやレースに関するノウハウを電子書籍にまとめています。ぜひ、スノーシューをはじめてみたい方、レースで上位を狙いたい方は御覧ください。
— 続いて、今後の予定はいかがでしょうか?
高村選手:直近では3月の全日本スノーシューイングレースの日光大会に出場します(注:諸般の事情で日光大会は中止となりました)
郡選手:スノーシューは、できれば2021年のアルゼンチンでの世界選手権に出場したいと考えています。南アメリカは行ったことがないので、もし行くことが出来ればとても良い経験になりそうです。国内のレースでは、トレイルランニングを少しずつ極めていきながら、階段競走にもチャレンジしていきたいと考えています。
— スノーシューイングレースはどのような方におすすめできますか?
高村選手:ウィンタースポーツをやりたいけどスキーは苦手な方や、スノーシューで雪山などに行ってみたいが1人では不安な方、それからトレイルランニングが好きな方にはおすすめできると思います。
郡選手:ぶっちゃけ全ての方におすすめしたいです。トレイルランニングをしている方は言うまでもありません。中にはトレイルランニングレースには出ないけれどスノーシューイングレースには出るという方もいらっしゃるんですよ。それだけスノーシューは魅力なんです。
— ありがとうございます。スノーシューの魅力をもっと多くの人に広めていきたいですね。最後に何か一言お願いします。
高村選手:スノーシューを履いて雪を楽しみましょう!
郡選手:スノーシューはとても気軽にできるスポーツです。ほんの少し暖かい格好をして、いざ銀世界へいかがでしょうか!
お二人とも、ありがとうございました!今後のますますのご活躍を期待しています!
今後のレースについて
2020年3月7日(土)~8日(日) に日光大会を予定していましたが、諸事情により来期へ延期となりました。
2020年4月11日(土)~12日(日)に予定している奥志賀大会の実施可否は日本スノーシューイング連盟にお問い合わせください。
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登山の総合スキルを体系的に学びたい方必見!
当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?