登山中に病気にかかったら、あなたならどうするでしょうか。
熱中症や低体温症など環境によって引き起こされる病気もあれば、もともと抱えている病気が発症する場合もあります。
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中高年登山人口の増加が原因の一つだと思われますが、登山中の疾病が急激に増えています。
登山は非日常の世界で、人間関係による精神的ストレスの他に、温度・湿度・気圧等のストレスが掛かり、これに肉体的ストレスが加わります。
特に中高年者は刺激に対する適応力が低下しているから、登山中のさまざまなストレスは発病の引き金になりやすいのです。
また、生活習慣病の持病のある人が気付かず登山すると、登山中のストレスによって悪化させてしまうことがあります。
このように、登山中に発症する病気のリスクは登山者としては常に考えておきたいものです。
そこで本稿では、代表的な山での病気とその対処法について説明したいと思います。
基本的なアドバイスとして、若い人も含め、ハードな仕事が続いて肉体的・精神的にストレスが溜まっているなら激しい登山は控えましょう。また、夜行などで睡眠を切り詰めた強行日程も避けた方が良いと思います。
代表的な5つの病気とその対処法
目次
(1)熱中症
主なものは熱射病と日射病ですが、これに熱ケイレンを合わせて熱中症といいます。
暑さで頭がボーッとして気分が悪くなり、吐き気がしてきたら熱中症の始まりだから、重症にならないうちに次の処置をしましょう。
- 日陰に入れる
- 胸をはだける
- シャツ等であおぐ
- 水かスポーツドリンクを与える
- 塩分を与える
- 冷却シートを貼る
冷却シートは止血点と言って血管が浮き出ている所に貼ると効果が大きいです。
ポイントは以下の4つです。
- ひたい
- わきの下
- あごの下
- 股の内側
高温多湿の中で運動中に40°C以上まで体温が上昇してしまうのが熱射病です。
発汗による体温維持が出来なくなるのが原因で、脱水症状が加わって重症になると発汗停止や意識障害が起きます。
強い直射日光を受けて体温が上昇してしまうのが日射病で、熱射病ほどの体温上昇はないのですが脈拍が増え、大量の発汗と血圧低下がみられます。重症になると失神状態に陥ります。
大量の発汗によって塩分が欠乏し、腹部や足の筋肉がケイレンするのは熱ケイレンです。
(2)低体温症
通常以上に寒く感じ、唇が紫色になって無気力になったら低体温症の始まりです。
“ふるえ”と筋肉の硬直があって体温は35°C近くにまで下がってきます。
自分で対処できるのはここまでが限界で、体温が35°C以下になると意識障害・言語障害・運動能力低下が起こります。
応急処置は体を温めることで方法は次の通りです。
- 風雨を避ける
- ツエルトの中に入れる
- 濡れた物を着替えさせる
- 化学カイロや湯たんぽ等で血管が浮き出ている所を温める(ポイントは熱中症の項と同じ)
- 首筋や頭部を温める
- 温かい飲み物を与える
- 焚火で体を温める
運動することで温めようとすると、呼吸量が増えて熱が奪われ、汗からも体温が奪われます。
アルコールは血行が良くなるのでその時は暖かく感じますが、血管が拡大して放熱を増やすから体温が低下します。
熱すぎる風呂は血管が収縮するから逆効果で、急激な加温は心室細動を起こして死亡します。
手足の冷えきった血液がそのまま戻る場合も心室細動を起こしてショック死するから、股や腋の下を温めてそれを防ぎます。
対応を誤らないために、体温調節のメカニズムを知っておきましょう。
人間の体は体内での発熱と外への放熱のバランスを取っています。
筋肉と肝臓で発熱が行われて、生きていれば常に放熱に見合う発熱があります。
発熱によって温められた血液は体の表面へ送り出されて放熱を行い、冷えて戻ってきます。
運動すれば発熱量が増えるから、放熱量を増やしてバランスをとるために、
1. 血行を良くして熱の移動速度を上げ
2. 汗の量を増やして蒸発による気化熱を皮膚から奪います
手足は表面積が大きいから皮膚が多く、その結果放熱量が大きいのです。
“ふるえ”という現象は筋肉を動かして発熱量を増やしているのですが、低体温症が進むと“ふるえ”が止まるのは、もうこれ以上頑張っても追い付かないと諦めて体力温存に方針転換するからです。
熱を伝える率は水が空気の20倍以上ですから、同じ温度でも水と空気では熱の奪われ方が違います。
顔等の露出部が雨にうたれ続けると、水中に浸しているのと同じで急速に熱を奪われます。
一方、濡れた衣服の場合には水分が温められてお湯になっていて、蒸発する時の気化熱で大量の熱を奪います。
(3)脳卒中(脳血栓・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)
症状として、
- 言葉が出ない
- ロレツが回らない
- 力が入らない
- 物が二重に見える
- 手足が痺れる
の前兆があります。
更に進むと激しい頭痛や吐き気・昏睡・痙攣、の兆候が現れます。早めにヘリコプターを呼びましょう。
動かしてはいけませんが、症状によっては気道確保が必要です。
登山中は発汗による脱水で血液がドロドロ状になり、脳内血管が詰りやすくなっています。
アスピリンは血液をサラサラにする働きがあるので、一錠の半分くらいを噛み砕いて与えます。本人は口の中で更に噛み砕けば吸収が速いです。バッファリンにもアスピリンが入っていますが、小児用バッファリンには入っていません。
(4)心臓病(狭心症・心筋梗塞・不整脈)
胸が締め付けられるように痛むのは狭心症で、悪化すると心筋梗塞になります。
狭心症の発作は15分以内に治まるはずで、30分以上続いたら急性心筋梗塞の疑いがあって危険です。
短い発作でも頻繁に起きるなら急性心筋梗塞を疑ってヘリコプターを呼びましょう。
不整脈は寝不足・過労・ストレスによって悪化します。
直ちにヘリコプターということではなく、養生しながら行動し、下山してから医者に掛かっても間に合います。
最後に
いかがでしたか。
山は街とは違い、非日常の世界です。そのため、病気にかかってもすぐには病院にかかれません。
ぜひ、本稿で説明した症状ごとの基本的な対処法と予防法を頭にいれて、万一のリスクを減らすように努めましょう。
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