遭難したと判断した際、適切に救助の要請をするためにあなたがとるべき行動をまとめた本稿、遭難を減らすための鉄則や、万一の際の救助要請方法をまとめた前編に続き、後編では救助ヘリコプターについて知っておくべきこと、山岳保険の必要性、救助隊員への感謝についてお伝えしたいと思います。
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4、ヘリコプターについて知っておくべきこと
目次
ヘリポートには条件がたくさんあります。
- 30m×20mのスペースが必要
- 周囲100m以内に10mを越える樹木があってはならない
等々ですが、山にはそんな条件の良い場所はありません。
普通はホバーリング(空中停止)してホイストで吊り上げる方法をとっています。
人の側からヘリコプターの姿は良く見えますが、上空のヘリコプターからは山中の人などかすかな点にしか見えません。
木の枝をかなり落して手を振っても発見して貰うのは難しいから、いろんな工夫をしましょう。煙を立ち昇らせるのが一番良いのですが、いつでも出来る事ではありません。揺れ動く物は発見され易いので、レスキューシートを揺らせば乱反射も加わってとても目立ちます。
色の中では白色が山には無い色だから紛れません。鏡の反射やカメラのフラッシュで発見して貰った人もいます。
今後、普及が進んでGPSがもっと身近になれば、ヘリコプターはGPSを積んでいるから強力な通報手段になるでしょう。
ヘリコプターが近寄ってきても大勢で手を振らないようにしよう。ご挨拶で手を振る一般ハイカーが多いので、それと間違えられてしまいます。
岐阜・長野・富山、三県山岳遭難対策連絡会議はヘリコプターに救助を求める合図を次図のように制定しています。
5、遭難するとお金がかかる!山岳保険の必要性
民間ヘリコプターが1回飛ぶと100万円以上かかります。1分間1万円で、一旦調査にきて旋回して戻り、人や装備を積んで再飛来するのでそういう金額になります。
一方、地上捜索も人件費×日数なので大変なお金がかかります。警察や消防は5日前後のうちに手掛かりが無ければ組織的対応を打切るので、その後は民間が頼りになります。
しかし、山岳保険に必ず入りなさいとアドバイスするのは費用負担の理由ではありません。いざという時、ヘリコプターがすぐ来てくれるかどうかが重要で、緊急時だからお金の問題ではありません。
ヘリコプターを要請すると本人が保険に入っているか聞かれて、入っていないと費用支払いの話になり、調査して支払いが確実でなければ飛ばないのです。
警察のヘリコプターは無料ですが、空いていることが少ないから期待しない方が良いです。民間ヘリか警察ヘリかの判断は警察がするのであって、登山者から“民間にしないで”とは言えません。
入院や死亡については街での保険に入っているだろうから、山岳保険で検討する要素ではありません。大切なのは遭難捜索費用保険と救援者費用保険で、それぞれ保険金200万円以上を目安にしよう。
遭難捜索費用保険は岩登り・雪山・バリエーション登山のためのもので、ザイル・ピッケル等の用具を必要とする登山を対象にしていて、救援者費用保険は一般登山やハイキング用で無雪期の普通の赤線ルート登山を対象にしています。
両方の登山をする人は2つ共入らなければならないが、最近は2つを合体したオールラウンド保険が出回るようになっています。
6、救助隊に感謝の念をもちましょう
①ヘリコプターは命懸けで飛んでいます
暖房を入れるとエンジンのパワーがダウンする上にフロントガラスが結露で曇るから、冬でも暖房を切って髭からツララを垂らして操縦しています。
岩陵地帯・岩壁の中・谷筋・急斜面でも必死の思いで飛んできてくれています。
有視界飛行のヘリコプターにとって視界を奪われる事は命取りのはずですが、多少ならガスっていても来てくれます。
②民間のヘリコプターは山岳救助に慣れている
警察・自衛隊・民間とあるが気持の上でも技術の上でも民間は山岳救助に慣れていて、お金をとるだけのことはあります。警察のヘリはタダだから、民間のヘリに来て貰いたく無いと思っている人は考え直しましょう。
遭難した時大切なのはお金でなく、上手に助けて貰う事ではないでしょうか。料金をめぐっていやな話を聞くが、助けて頂いたのだから気持よく支払いましょう。
③救助隊への礼儀
救助隊の人達は他に自分本来の仕事を持っているのだから、その日の予定をキャンセルして助けに来てくれているのです。救助隊には礼儀正しく接し、感謝の気持を態度で表わしましょう。
④事前に登山計画書を出す
行方不明者の捜索で登山計画書が出ていないと、救助隊に多大な迷惑をかけます。
登山口か登山最寄り駅のポストに入れるのが普通ですが、個人情報を悪用されたくないと思うなら県警へ送っても良いです。ホームページでも受付けてくれています。
最後に
いかがでしたか?
遭難は、自分だけでなく様々な人に大きな心配や迷惑をかけてしまう行為です。
そうならないよう、常に準備を怠らず気をつけることが第一ではありますが、万が一の際は本稿で説明したように、統制がとれ、節度と礼儀をもった遭難をするよう心がけるていただければと思います。
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当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?
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