装備紹介
今回の山行では、テン泊装備とそれに伴う水・食料、岩稜帯通過に必要なヘルメットや安全確保器具といった重量物を必要とする一方、ランも想定したスピード登山を両立するための軽量化がポイントです。
そして真夏とはいえ北アルプス、ガスも多そうで時折雨もぱらつく予報であったため防寒対策も必要です。
そのような前提条件のもと、様々な想定をしながら装備を選定しました。
ロードランニングのいわば延長として、必要最低限の登山装備で山を走り抜けることをトレイルランニングと呼ぶならば、これは登山ではあるがより早く、遠くまで到達する手段であり、僕はそれをマウンテンランニングと勝手に呼んでいます(笑)
世間ではファストパッキングみたいな感じで呼ばれていますね。
以下、考え方と選択したギア、想定とのギャップなどをまとめます。
アルプスを走るという方は多くはないと思いますが、軽量化は登山における絶対正義であり、なるべく快適性を失わずに身軽にテント泊縦走登山したい方のお役に立てればと思います。
ウェア
予報では曇りがち、時折雨もぱらつくことも想定されたことと、スタートが標高1800m付近であるため、一貫して比較的涼しい気候であることが予想されました。
そのため、トップスは長袖の吸水速乾のベースレイヤーに化繊の速乾性半袖シャツ、ボトムスは走ることも想定してハーフパンツにスポーツタイツ、トレッキング用のミドルサイズのソックスをチョイス。
シューズはゴアテックスのトレイルランシューズの一択。
例え走らなくても、テント泊縦走であったとしても、足首の柔軟性や岩場での足裏感覚などを考えると、夏山ではハイカットのガチガチブーツよりもローカット、さらに動きやすさも考えてトレイルランシューズに防水性が加わったものが僕はベストだと考えています。
これらの他、テン場での防寒を兼ねたレインウエア上下、コンパクトなプリマロフトの保温着を携行しました。
その他サングラスとキャップ、グローブも携行。グローブは調理を考えて軍手でしたが、調理と寝るとき以外はしませんでした。
ちなみにベースレイヤーには、沢登りや雪山でも愛用している圧倒的な吸水速乾性を誇る、finetrackのドライレイヤーウォーム。おすすめです。
シューズはサロモンのSense Ride GTX invisible fit。紐を締めたり緩めたりするのが簡単にできるQuicklace™はテン場や小屋で脱ぎ履きするストレスを無くしてくれるのでお気に入りです。
結果、ウェアに関しては過不足なく快適に過ごすことができました。
寝具類
2日目はスピードが求められるので、軽量化できるとインパクトが大きいのが寝具類。いわゆる、UL(ウルトラライト)系のギアを選択しました。
テントは、軽量なツェルトと迷いましたがストックが邪魔になるのと雨も予想されたので、UL仕様のダブルウォール軽量1人用テントを選択。僕が使っているのはTerra Novaのレーサーフォトン1で、670gという軽さ。
実際、夜間に雨と風にさらされましたが浸水することもなく快適でした。
そして軽量化を重視してシュラフはもたず、SOLのエスケープヴィヴィで対応。透湿防水性がありシュラフカバーとしても有用です。
マットは、クライミットのイナーシャオゾン。肉抜きされ軽量化(357g)とコンパクト化が図られているのに枕がついて寝心地が良くて気に入っています。
結果としては寒かったです。寒さの原因は地面からの冷気でした。それさえなんとかできれば快適だったはず。
その話を後日メンバーにすると、軽量アルミ断熱素材のアストロフォイルを敷くと良いという話になり、迷わず全員購入することに(笑)。携行時はザックの背面パッド代わりにできるとのことで、僕自身まだ使用していないですが期待大です。
クッカー類
軽量化にはこだわるものの、極限まで切り詰めるストイックな山行とは違い、仲間との夕食も大きな楽しみであるため、酒と食事は妥協したくないという思いで以下をチョイスしました。
クッカーは、軽いのに使い勝手のよいToaksのUltraLight cook set 550ml。ポッド、蓋、ストーブ、風防、スポークすべてあわせて122gです。
このストーブは、本来は固形燃料を使うタイプなのですが、ここは軽さより火力を優先して固形燃料ではなくガスストーブで代替。
また、フライパンも追加してちょっと贅沢に炒めものができるようにしました。
ただ、取っ手のあるフライパンは収納性が悪く重かったりするので、トランギアのノンスティックタイプのフライパンS(73g)と、バーゴのポットリフター(23g)を組み合わせてフライパン代わりとし、軽量化を図っています。
たった96gの追加で夕食が贅沢になるのであれば良いかな、という判断です。
コップはシリコン製の折り畳めるタイプのもので、お酒やコーヒーを飲むのに使います。
水・食料
水は2日間で4L携行。内訳は、ハイドレーション2L、プラティパス水筒1L、ペットボトル500m✕2。
初日の行動中に500ml、夕食(お湯割りやコーヒー用含む)に1L強、朝食に500ml強(コーヒー用含む)、2日目は1.5Lを行動用として足りなければ山小屋で調達する計画。
夕食はアルファ米にフリーズドライのカレー2つ分と、ぜいたくおつまみとして、入山前のコンビニで買ったチョリソーと砂肝。食材からでる油を活用してフライパンで炙ったらめちゃめちゃ美味しくてみんなにも人気でした。
朝食はアルファ米にフリーズドライの牛丼✕2とコーヒー。
予定通りすべての食材を消費し、過不足はありませんでした。
行動食
行動食はあまりこだわらずありものベースで、焼き菓子、非常食用羊羹、ブラックサンダー、エナジージェル、アミノ酸(顆粒タイプ)など最低限。2日目は基本ジェルで補給しながら動き続ける想定でした。もし足りなければ山小屋を利用する計画。
ちなみにブラックサンダーはgあたりカロリーと単価の面で行動食としてのコストパフォーマンスが最強と考えています。味もいろいろあって美味しいです。
ジェルは5つ持っていきましたが、暑さもなく汗もあまりかかなかったので結局1個しか消費しませんでした。
僕がこれまでに試したジェルの中でもっとも美味しいと感じたのがMag-on。特にピンクグレープフルーツ味は心地よい苦味まで再現されていてさわやかな味なのが良いんです。
新味の青みかんに期待していましたが、酸っぱさの再現がイマイチだったかな・・?普通に美味しいのですけど。
お酒
飲める人は山で泊まるなら必須ですよね!どうせ初日で消費しきるので躊躇せず飲みたいものを携行するというのが今回のコンセプト。
- ビール500ml缶✕1(唐松山荘でも売ってたので結果的には不要でした)
- ワイン350ml(ワイン用プラティパスに入れる)
- 焼酎180ml(コンビニで売っているプラスティックボトルタイプ)
アテとしてモンベルで売っていたビーフジャーキーを購入したのですが、これがめちゃくちゃ美味しかったです。(商品名は失念しました・・)
登攀ギア
今回は急峻な岩場を通過するため、最低限安全を確保するための道具を携行しました。
- ヘルメット
- スリング150cm✕1(簡易シットハーネス用)
- スリング120cm✕2(チェストハーネスとセルフビレイ用)
- 環付きカラビナ✕2
結果的にはヘルメット以外は不要でした。
撮影機材
今回の動画撮影は、360度撮影が可能なInsta 360 one X2と消える自撮り棒を使用しました。映像は次ページを御覧ください。
また、写真撮影はスマホ(Google pixel4)を使用しました。
小物類
その他の必須アイテムや小物類をリスト化しておきます。
- ヘッドランプ
- 応急キット
- モバイルバッテリー&ケーブル
- 除菌シート
- 手ぬぐい
- トイレットペーパー
- ゴミ袋
- 目薬
- 日焼け止め
- ザックカバー
- ライター
- 熊鈴(使用せず)
応急キットには、特に長期縦走する場合など靴ずれパッドを入れておくと安心です。また、靴ずれ防止クリームのガーニーグーもおすすめです。
地図とコンパスは、本来は持つべきかもしれませんが、今回は一般登山道ということと軽量化を兼ねて腕時計にすべて収めました。すごく便利なのでぜひご参照ください。
ザック
これらをすべてパッキングするためのザックとしてチョイスしたのは、山と道 MINI。
最大32Lで395gの軽量性は、ランも想定する今回の山行にマッチすると考えました。
ヘルメットも含め外付けすることなくすべてザック内に収まりました。
2日目は水や食料がなくなった分軽くなりましたが、雨に濡れたテントが重さを増したのもあり、走るとさすがに振られて、トレランザックのような快適性はありませんでしたが、走れなくはありませんでした。
振られてしまうのはパッキングの工夫次第かもしれません。
ということで、今回の山行での装備紹介は以上です。参考になりましたでしょうか?
次ページでは、絶景映像交えた山行の様子と、最後まで猿倉に下山するか栂池まで突っ走るか悩んだ心の葛藤とその結末をお届けします。