みなさんは、アイスクライミングという冬山のアクティビティはご存知でしょうか。
僕は、冬になるともっぱらバックカントリーに出かけ雪山登りと滑走の両方を楽しんでいるのですが、これまでアイスクライミングの経験はなかったんです。アイスクライミングといえば、その昔ファミコンでアイスクライマーというソフトがあったなぁと思うくらい(年がバレますね)、関心も薄かったのが正直なところでした。
そんな折、GoALPを監修する日本登山インストラクターズ協会認定インストラクターであり、クライマーの安村さんより、「アイスも知っておいたほうがいい」と、アイスクライミング講習のお誘いを受けたのをきっかけに実際に体験する機会をいただき、新たな山の世界が広がった!と強く感じたので、それをみなさんにもお伝えすべく今回GoALPにその体験記を寄稿しました。
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緊張の(!?)アイスクライミング動画もありますので、ぜひお楽しみください。
講習のゲレンデは、西上州・霧積
目次
2018年の1月某日、午前10時に集合場所に指定された霧積温泉駐車場へ向かいます。
霧積は、都内からだと関越から上信越道に入り松井田妙義I.C.から一般道で30分くらい走ったところにある、アイスクライミングの講習ではメジャーなゲレンデなんです。この日はとても良い天気で、20人くらいのアイスクライマーで賑わっていました。ゲレンデまで駐車場から徒歩で五分ほど山に入った場所で、アクセスが良いのも人気のある理由なんですね。
道中、滝がきれいに氷結しておりテンションもあがります。
装備について
アイスクライミングに必要な装備で特徴的なものといえば、アイスアックスですね。両手で使うので2本必要です。石突のないコンペ用のものとアルパイン用の二種類に大別されるようなのですが、今回は後者のものをお借りしました。
その他、ヘルメットやハーネス、カラビナ、ビレイデバイスなど岩登りや沢登りなどでも必要になるクライミングギアとアイゼンが必要になります。アイゼンはこれまでバックカントリーで使っていたストラップ式12本爪アイゼンを使用したのですが、ワンタッチ式のアイスクライミングに対応したものが断然登りやすいとのことです。
フリックロック式ポンメル採用で握りの位置をシチュエーションに応じて変えることができます。堅牢なティタンピックを装備し、シャフト長50cmとアイスクライミングに最適な造りです。
アイスクライミング、ミックスクライミング用クランポン。バインディング交換可能なフロントポントにより、アイス・ミックスクライミングから、ドライツーリングまで様々なアクティビティに対応します。
服装は通常の雪山登山のもので問題ありませんが、動かない時間も多く体が冷えるので、より暖かい格好だと良いと思います。ベースレイヤーにフリース、ハードシェルだけでは少し寒いと感じました。
手元は雪山用のグローブであればかまわないと思いますが、ギア類の操作を考えると5本指でより操作性の高いグローブが快適だと思います。
圧倒的なコストパフォーマンスで防寒性、透湿性、操作性を兼ね備えた冬山用グローブ
基本動作について
いよいよ実技へ。
ゲレンデ手前にある山肌から染み出した水が凍った壁があり、そこでウォーミングアップがてら基本的な動作をレクチャーしてもらいます。
アプローチの時点でいきなり凍っている斜面を通過する場面があったのですが、この時点での第一印象は「あ、これはヤバいな」と(笑)こんなツルッツルッなところ本当に登れるのだろうかとひそかに日和ったのは内緒です。
さて、基本的な動作とコツですが、まずは手の操作。アックスで氷壁を叩く際に極力小指を壁に近づけて打つんです。手と壁が離れた状態で打ち込んでも不思議と全然打ち込めないんですね。逆にちゃんと近づけると気持ちよく打ち込めます。そして打ち込む際は手首のスナップを効かすイメージ。
続いて足の操作。ポイントは、壁に垂直に蹴り込むこと。壁に対して斜めになってしまうとちゃんと蹴り込めないんですね。僕は油断するとすぐ斜めになってしまいました。
そして移動ですが、これはクライミングと同じで体重移動が重要なんです。最初はつい力で登りたくなりますが、それだと傾斜のある斜面は対応できても垂直に近づくつれキツくなってしまうんです。
安村さんいわく、クライミングが上手い人でアイスクライミングが下手な人はいないと。練習あるのみですね。
いざ、氷壁を登攀
ハーネスにロープを結び、いざ登ろうとアックスを打ち込み、アイゼンを蹴り込むも最初は恐怖がまさり体を動かすのをためらいます。
だって、アックスの刃先のひっかかり(ホント、点でひっかかっているイメージ)とアイゼンの前爪の蹴り込みだけが頼りで、体重のせてこのツルツルの壁を登るなんて、なんてクレイジーでエクストリームな行為なんだ!片手もしくは片足だけでもそのひっかかりがはずれてしまったら、それだけではいアウト〜!な状況に震えます。(もちろんロープで確保はしてもらっていますが)
ボルダリングやクライミングと違い、直接自分の手や足の感覚ではなく、アックスやアイゼンというギアを通じた感覚というのが最初信頼できなかったんですね。
それでも意を決してカラダを動かすと、「意外と安定してるやん」という感じをつかみ、なんとか登ることができました。
そしていよいよゲレンデへ
その場所は、見事な氷の壁と氷の柱。普段僕が行くような雪山ではこのような景色を見ることがなかったので、しばし圧巻されつつ、今まで見たことのない美しい自然の風景に魅入られました。なので、その後インスタグラムで#アイスクライミングの写真をフォローするようになりました。氷の世界、とても美しいです。
さきほどのウォーミングアップで、ざっくりとごく基本的なコツをつかんだ僕は、これからこの氷の壁に挑むのだと思うと冒険心のような興奮を覚えました。(半分ビビっていたのも内緒です笑)
同じ講習生のOさんのしっかりしたビレイのもといざ氷の壁にとりつきます。さきほどのウォーミングアップに比べて明らかに傾斜が急で、中途半端なアックスワークやアイゼンワークでは全然登れないことを実感。基本に忠実に、一歩一歩丁寧に歩みを進めます。
それでもどうしても力づくになってしまい、途中疲れから操作が雑になり、何度かロープにテンションかけてもらって助けてもらう場面が発生。本来ならアウト、ロープがなければ滑落している状態ですね。
また、時折アックスを打ち込むと大きな氷の破片が飛び散り、その場合は「ラク!」と叫んで注意を促します。
半分テンパりながら、がむしゃらにのぼりました。上まで登り、ロワーダウンしてまた登り、計3本連続でクライミングの練習をし、腕もメンタルもヘロヘロ。安村先生、なかなかスパルタ笑。とにかく自分で経験して覚えるのが一番と指導いただきました。まったくその通りですね。
緊張感伝わる動画編!
講習を振り返って
今回はあくまで講習としてのアイスクライミングではありましたが、新たな山の魅力と楽しみ方が大きく広がりました。なんといっても、生身のカラダだけでは絶対に登れない氷の壁を登ってやろうというエクストリームな精神、未知の領域を切り開いている感のような冒険心をとても掻き立てる、そんなアクティビティであることを実感しました。クライマーとしての悦びがそこにはあると思います。
そんなアイスクライミングというアクティビティ、みなさんも挑戦してみてはいかがでしょうか。きっと新しい世界が開けると思いますよ!
アイスクライミングを始めるには
やってみたい!と思っても、実際、まわりに経験者がいないとアイスクライミングははじめるのが難しいと思います。
でも安心してください。GoALPでもおなじみ、JMIA認定インストラクターの栗山さんが主宰するKuri Adventuresでは、未経験者でもアイスクライミングを経験できる講習メニューを用意していますので、ぜひチェックしてみてください。
メニュー概要
はじめての天然アイス ” 霧積 “
アイスクライミング入門者からご参加頂ける、アイスクライミング体験企画です。自然に凍った滝を、アイゼンとアイスアックスで攀じ登ります。アイスクライミングの世界を、ちょっと覗いてみませんか?
ゲレンデアイスで練習! ” 美濃戸 “
アイスクライミング入門者から経験者まで楽しめる、様々なグレードのルートが点在するアイスクライミングゲレンデです。一日しっかりと練習を行い、アイスクライミングのスキルを高めましょう!
登山の総合スキルを体系的に学びたい方必見!
当サイト「GoALP – 山を楽しむ人のための安心・安全登山メディア」の監修者でもあり、登山を教えることのできる者が集まった非営利集団で、山岳事故を減らすための啓発活動をしている日本登山インストラクターズ協会(2013年創立・岩崎元郎代表)が、来春より開催する6期目「JMIA登山講習会」の受講者を募集しています。あなたも、一年かけて実際に山に登りながら山岳指導者の手ほどきをうけてみませんか?
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